鍋・汁もの
鍋料理
51種
鍋料理は、一つの鍋を囲み、出汁で具を煮ながら食べる料理群を指す。割り下で牛肉を煮るすき焼き、出汁に肉をくぐらせるしゃぶしゃぶ、白菜や豆腐と取り合わせる寄せ鍋のように、全国どこでも食べられる型がある。一方で、きりたんぽ鍋や石狩鍋、ぼたん鍋のように、土地の食材と暮らしから生まれた鍋もある。出汁の味つけと具の組み合わせで、割下・すき焼き系、しゃぶしゃぶ系、水炊き・ちり系、味噌仕立て、醤油・寄せ鍋系、おでんと系統が分かれ、ここではその違いと土地とのつながりをたどる。
おでん6
- 味噌おでんAichi Miso Oden愛知県土鍋の中央に味噌だれの壺を置き、大根や豆腐などをだしで煮てから壺の味噌につけて食べる。江戸で醤油だしの「関東煮」が広まる一方、愛知では豆味噌(八丁味噌)をつけて食べる方法が根づいたと伝わる。
- こんにゃく味噌おでんKonnyaku Miso Oden群馬県生産量日本一のこんにゃくを串に刺し、酒と水で煮てから甘辛い味噌だれを塗った、群馬の冬の一品。水気を切る際に布巾へたたきつけることから「ひっぱたきおでん」とも呼ばれる。
- おでんOden大根やこんにゃく、練り物、卵などをだしでじっくり煮込む鍋料理。同じ「おでん」でも、だしの色や具、食べ方は土地ごとに大きく違うとされる。売られてきた場所の違いも背景にあるという。
- こんにゃくのみそおでんKonnyaku no Miso Oden埼玉県 寄居町こんにゃく芋の産地・寄居町風布地区や秩父地域で、生芋から手作りしたこんにゃくを串に刺して味噌だれで食べる冬の一品。市販の粉こんにゃくとは異なる独特の風味と食感が持ち味。
- 静岡おでんShizuoka Oden静岡県 静岡市牛すじや黒はんぺん、練り物、大根、卵を串に刺し、色の黒いだし汁で煮込んで青のりとだし粉をかける。戦後、捨てられていた牛すじや豚モツを具にしたことで人気が高まったと伝わる、静岡市の郷土おでん。
- しょうが味噌おでんShoga Miso Oden青森県 青森市煮たおでんに、赤味噌とみりん、だしを煮立てすりおろし生姜を混ぜたたれをかけて食べる。戦後の青函連絡船の屋台で客の体を温めようと出したのが始まりと伝わり、つぶ貝や大ぶりの練り物が具に入る。
味噌仕立て8
- あんこう鍋Ankou-nabe茨城県 北茨城市あんこうの身や皮、肝、胃袋などを野菜と煮る、茨城県北の冬の鍋。漁師が船上で食べたどぶ汁を、食べやすく仕上げたものとされる。味噌仕立てと醤油仕立てがある。旬は11月から3月ごろにあたる。
- べか鍋Beka Nabe石川県ぬか漬けにしたイワシ(コンカイワシ)を、白菜やきのこと酒粕で煮込む能登の冬鍋。冷蔵技術のない時代の保存食が発祥とされ、大衆魚だったことから「今日も食べっか」が名の由来ともいわれる。
- ぼたん鍋Botan Nabe兵庫県 丹波篠山市白と赤の合わせみそでとっただしに、猪肉と季節の野菜をたっぷり入れて煮る丹波篠山の鍋。粉山椒を効かせて食べることが多く、切り分けた猪肉を牡丹の花びらのように盛り付ける店もあるという。
- いのぶた鍋Inobuta Nabe山梨県 山梨市雄いのししと雌豚を掛け合わせた「いのぶた」の肉を、ごま入り味噌汁で野菜やきのこと煮る三富地域の鍋。獣臭さがなく脂に甘みがあるとされ、戦後の狩猟文化を背景に飼育が奨励されたと伝わる。
- 石狩鍋Ishikari Nabe北海道ぶつ切りにしたサケのあらと身を、キャベツや大根などの野菜と昆布だしで煮て味噌で仕立てる鍋。石狩川の河口で、大漁を祝った漁師たちがとれたてのサケを味噌汁に入れて食べていたのが始まりと伝わる。
- かきの土手鍋Kaki no Dotenabe広島県土鍋のふちに赤白の味噌を土手のように塗り、崩しながら味を調える広島湾の牡蠣鍋。潮の流れと川の栄養が交わる湾で育つ身の大きな牡蠣を、冬の味覚として一般家庭でも飲食店でも楽しんでいる。
- しし鍋Shishi Nabe岡山県岡山県北部の美作地域で、冬の貴重なたんぱく源として食べられてきたイノシシ肉の味噌鍋。カツオや昆布でとった出汁に味噌を溶き、猟師をはじめ一般家庭でも親しまれているという。美作地域全体の広域のため美作市を代表点とした。
- とうへい鍋Tohei Nabe福岡県 宗像市クロアナゴ(トウヘイ)の骨からとった出汁でキャベツなどの野菜を味噌仕立てで煮込む。小骨が多く捨てられていた魚を漁師が鍋にしたのが始まりで、宗像市大島だけに伝わる料理という。
水炊き・ちり系8
- 飛鳥鍋Asuka Nabe奈良県 明日香村鶏肉と季節の野菜を牛乳とだし汁で煮込む明日香村の鍋。飛鳥時代に唐からもたらされた乳製品が宮中に伝わり、後に飼っていた鶏の肉を牛乳で煮た精進料理が起源とされ、昭和初期に今の形になったという。
- 美酒鍋Bishu Nabe広島県 東広島市鶏肉や砂ずり、豚肉を塩こしょうと日本酒だけで仕立てた鍋。銘醸地・西条の杜氏が酒造りの合間に食べたまかない料理が始まりで、利き酒の邪魔をしない薄味が特徴と伝わる。
- ハモ鍋Hamo Nabe大阪府骨切りしたハモを、頭と骨でとった出汁に玉ねぎ・じゃがいもを合わせて煮る鍋。日本における玉ねぎ栽培発祥の地とされる泉州地域ならではの一品で、泉州玉ねぎの甘みが淡白なハモとよく合うという。
- 常夜鍋Jobannabe豚肉とほうれん草を、昆布と日本酒の出汁でさっと煮て、ポン酢で食べる鍋。「毎晩食べても飽きない」ことが名の由来とされ、出汁に味をつけない水炊きの系統にあたる。具は豚肉とほうれん草が基本。
- 若鶏の水炊きMizutaki福岡県骨つきの若鶏を野菜とともにじっくり煮て白濁したスープをポン酢でいただく鍋。長崎に伝わった南蛮の鶏スープが博多で和洋折衷され、祭りの直会でも欠かせない一品になったと伝わる。
- たらちりTarachiri鱈の切り身を豆腐や野菜とともに昆布出汁や熱湯で煮て、ポン酢や醤油で食べる鍋。「ちり」は、熱湯に通した魚の身が縮れる様子にちなむとされる。鱈は冬に旬を迎える魚で、淡白な甘みが出汁に溶け合う。
- てっちりTecchiri大阪府 大阪市ふぐの身やあらを白菜や豆腐とともに昆布出汁で煮て、ポン酢で食べる鍋。「鉄砲」と呼ばれたふぐの「ちり鍋」から、大阪で昭和30年ごろ使われ始めた呼び名とされる。昆布出汁で煮てポン酢で食べる。
- 湯豆腐Yudofu京都府 京都市左京区昆布を敷いた土鍋で豆腐をそっと温めて食べる鍋。南禅寺の精進料理に始まり、門前の茶店で出されたのが最初とされる。京都の軟水が、煮ても柔らかい豆腐を支えている。豆腐と水、昆布だけの簡素な鍋で、味は材料と水に左右される。
しゃぶしゃぶ系2
醤油・寄せ鍋系17
- ちゃんこ鍋Chanko Nabe東京都 墨田区鶏肉や白菜、豆腐などを出汁でまとめて煮込む、相撲部屋発祥の鍋。明治期に始まったとされ、手をつくことが負けを連想させるとして牛や豚など四足の肉を避けてきたと伝わる。両国を中心に元力士が営む店で味が受け継がれている。
- だまこ鍋Damako Nabe秋田県炊きたてのご飯をすりこぎで軽くつぶして丸めた「だまこ」を、比内地鶏の出汁でごぼうやせりと煮る鍋。八郎潟の魚が減り、代わりに鶏を使うようになったのが始まりと伝わる。
- ハモすきHamo-suki兵庫県骨切りしたハモと淡路島産タマネギを、だし汁で煮ながら食べる寄せ鍋。沼島近海の泥地で育つハモは皮が薄くやわらかいとされ、脂がのる初夏から秋にかけて、玉ねぎの甘みと合わせて味わう。
- 芋煮Imoni山形県里芋と牛肉、こんにゃく、ねぎを醤油味で煮込む秋の鍋で、最上川舟運の船頭が河原で棒ダラと里芋を煮て待ち時間を過ごしたのが始まりと伝わる。庄内側では豚肉と味噌仕立てに変わるなど地域差も大きい。
- いもたきImotaki愛媛県 大洲市鶏肉や里芋、こんにゃく、しいたけを煮込む鍋で、発祥は大洲市とされる。地元名産の里芋を持ち寄った行事が始まりと伝わり、秋には河原に大勢が集まり月見をしながら囲む愛媛の風物詩という。
- いしる鍋Ishiru Nabe石川県能登に伝わる魚醤いしるを出汁に使い、旬の魚介と野菜を煮る冬の鍋。少なくとも1700年代には作られていたとされ、秋田のしょっつる、香川のいかなご醤油と並ぶ発酵調味料が土台になっている。
- じゅんさい鍋Junsai Nabe秋田県 三種町沼で育つ水草じゅんさいのゼリー状の新芽を、鶏肉やごぼう、せりと煮た鍋料理。つるりとした喉ごしが持ち味で、日本有数の産地である三種町では箱舟で手摘みする夏の風物詩と伝わる。
- 鍛冶屋鍋Kajiya Nabe兵庫県 三木市だし汁に醤油とみりんで甘辛く味付けし、タコとナスを煮込む三木市の鍋。金物の町で働く鍛冶職人がほてった体を冷やすために食べたと伝わり、行商が運んできた明石沖のタコと夏野菜のナスを合わせている。
- 鴨鍋(長浜)Kamo-nabe (Nagahama)滋賀県 長浜市脂ののった鴨肉をそぎ切りにし、白菜やねぎ、ごぼう、せりなどとともに和風の出汁で煮る鍋。滋賀県湖北の長浜を代表する冬の味覚で、鍋の季節は11月から3月にあたる。鴨の脂がだしに溶け、体が温まる。
- かにすきKanisuki大阪府 大阪市中央区松葉ガニなどのカニを、白菜や野菜とともにだしで煮る鍋。昭和35年(1960年)に大阪の西道頓堀で、うどんすきをヒントに名づけて考案されたとされる。カニ味噌も楽しめる。
- キムチ鍋Kimuchi-nabe白菜や豚肉、豆腐などの定番の具を、キムチの辛みと酸味で味つけして煮る鍋。日本で、定番食材の鍋をキムチ味にして呼んだものがもとだとする見方があり、1999年にキムチ鍋の素が発売されて家庭に広がった。
- きりたんぽ鍋Kiritanpo Nabe秋田県 大館市少し硬めに炊いたご飯を棒に付けて焼いた「たんぽ」を鍋の大きさに切り、比内地鶏の出汁でごぼうやせりと煮込む。炭焼きで山にこもる人々の残りご飯の食べ方が始まりと伝わる、大館・鹿角地方の郷土料理。
- 鯨のハリハリ鍋Kujira no Harihari Nabe大阪府 大阪市かつお節などの出汁に醤油を合わせた鍋に、水菜と鯨肉をたっぷり入れて煮る冬の鍋。水菜を噛む「ハリハリ」という音が名の由来とされ、大阪・千日前で1967年に創業した鯨料理店が発祥と伝わる。
- もつ鍋Motsunabe福岡県 福岡市牛の小腸などのもつを、キャベツとニラ、にんにく、唐辛子とともに醤油や味噌のスープで煮る福岡・博多の鍋。戦後に炭鉱で働く人々が、もつとニラを醤油の味でアルミ鍋で炊いたのがはじまりとされる。
- ねぎま鍋Negima Nabe東京都 葛飾区ぶつ切りのまぐろとねぎを醤油だれでさっと煮る、江戸生まれの小鍋料理。今は高値のトロも江戸時代は日持ちしない下品な部位とされ、痛みやすい脂身を火にかけて食べる工夫から生まれたと伝わる。焼き鳥の「ねぎま」はこの鍋の名を受け継いだ料理とされる。
- しょっつる鍋Shottsuru Nabe秋田県 男鹿市秋田の魚醤しょっつるを昆布出汁に合わせ、ハタハタと豆腐、白菜などの野菜を煮る冬の鍋。発祥地の男鹿市ではハタハタだけのシンプルな汁で食べると伝わり、雷鳴とともに沿岸に群れる時季に食べられる。
- 寄せ鍋Yosenabe鶏肉や白身魚、海老に、白菜や葱、きのこ、豆腐などを取り合わせて煮る鍋。決まった型は無く、ごった煮ではなく具の煮え加減と鍋つゆの澄み方を保つのが理想とされる。決まった土地は持たず、冬の食卓で囲む鍋として広まった。
割下・すき焼き系10
- 鶏肉のすき焼きToriniku no Sukiyaki福岡県鶏を一羽まるごと、もつも一緒に大皿に盛り、白菜や春菊とともに砂糖と醤油の濃い味で煮る。江戸期の飢饉を機に養鶏が盛んになった糟屋郡から宗像市一帯に伝わる寄合の鍋料理という。
- 牛鍋Gyu Nabe神奈川県 横浜市牛肉や豆腐、春菊などを味噌や醤油だれで最初から煮込む横浜市発祥の鍋料理。開港後に西洋の肉食文化と出会って生まれ、居酒屋の主人が牛鍋屋を開いたのが始まりと伝わる。
- かしわのひきずりKashiwa no Hikizuri愛知県とり肉と野菜を鍋で焼き、砂糖と醤油で味付けして溶き卵につけて食べる、とり肉のすき焼き。明治初期に名古屋コーチンが生まれるなど愛知は養鶏が盛んで、全国的にも珍しいとり肉のすき焼きとして伝わってきたとされる。
- かしわのすき焼きKashiwa no Sukiyaki奈良県関西で食用鶏を指す「かしわ」の名がついた奈良のすき焼き。牛が天神さんの守護神とされることから、天満宮の秋祭りでは牛の代わりに鶏のすき焼きが食べられてきたとされ、割り下で白菜や焼き豆腐と煮る。
- すき焼きSukiyaki薄切りの牛肉を鉄鍋で焼き、割り下や砂糖醤油で煮ながら溶き卵につけて食べる鍋料理。関東は割り下で煮る、関西は肉を先に焼いて味付けするなど、作り方の型が東西で分かれるとされる。
- すき焼き(関西風)Sukiyaki (Kansai-fu)大阪府 大阪市牛脂をなじませた鍋で肉を焼き、砂糖と醤油をじかにかけて味つけするすき焼き。鋤の上で魚や肉を焼いた「鋤焼き」の流れをくむとされ、関東風が煮るのに対してこちらは焼いてから煮る。
- すき焼き(関東風)Sukiyaki (Kanto-fu)東京都あらかじめ合わせた割り下で牛肉と野菜を煮ていくすき焼き。横浜や東京で広まった牛鍋の流れをくむとされ、肉を少し焼いてから割り下を注ぐ形が目安になる。関西風との分かれ目は、味を鍋の外で決めるか中で決めるかにある。
- うなぎ豆腐Unagi Dofu島根県 松江市宍道湖のうなぎと角切りの焼き豆腐を出汁で煮て、京葱やきのこを加えた柳川鍋風の鍋料理。出雲産うなぎが大阪へ運ばれた輸送の歴史とともに伝わってきたとされる。焼き魚ではなく鍋物のため棚を homestyle から hotpot に変更した。
- 柳川なべYanagawa Nabe福岡県 柳川市下ごしらえしたドジョウをごぼうとともに土鍋で煮て、溶き卵でとじる。掘割の水郷として知られる柳川市に伝わる一皿で、同じ名で知られる東京の鍋料理とは別に、地元では独自の一品として親しまれているという。
- 柳川鍋Yanagawa Nabe東京都開いたどじょうをささがきごぼうとともに割り下で煮て、溶き卵でとじる浅草発祥の鍋。丸ごと酒で酔わせて煮る「丸鍋」、骨を抜いて煮る「ぬき鍋」もあり、卵でとじる柳川鍋はあっさりとした仕上がりになるという。