揚げもの
揚げ物
48種
揚げ物は、天ぷらのように衣を薄くまとわせて素材の香りを引き出す型、とんかつやコロッケのようにパン粉で包んで肉汁を閉じ込める型、さつま揚げやじゃこ天のように魚のすり身を油で固める型に大別されるとされる。港町では獲れた魚をその場で揚げる加工品が育ち、内陸では肉や野菜を使った型が定着するなど、油と素材の組み合わせに土地が表れる。ここでは衣と素材の型ごとに、その形になった理由をたどる。
土地ごとの料理40
- 揚げまき湯波の煮物Agemaki Yuba no Nimono栃木県 日光市生ゆばを重ねて棒状に巻き、輪切りにして油で揚げた「揚げまき湯波」を、薄味でじっくり煮た日光の郷土料理。表面が波打つ日光ゆばの技法を生かし、正月や祝いの席にも欠かせない。
- がね揚げGane-age熊本県 天草市拍子切りにしたさつまいもをしょうが入りの甘めの衣にくぐらせ、油で揚げた惣菜。天草の方言で「がね」はカニの意味で、揚げた形がカニの足に似ることから名付けられたという。精進料理としても使われる。
- 紅しょうが天Beni Shoga Ten大阪府梅酢に漬けた紅しょうがの薄切りに衣をつけて揚げる天ぷら。梅酢の酸味としょうがの辛みが酒によく合い、昭和15年発表の織田作之助『夫婦善哉』にも一銭天ぷらとして登場するほど古くからの大阪庶民の味という。
- チキンチキンごぼうChikin Chikin Gobo山口県一口大の鶏の唐揚げと素揚げごぼうを甘辛いたれで絡める学校給食発の一皿。1995年ごろ、家庭のレシピを募って栄養教諭が考案したとされ、口ずさみやすい名前とともに県民食として広まったと伝わる。
- チキン南蛮Chikin Nanban宮崎県 延岡市揚げた鶏肉を南蛮酢にくぐらせ、タルタルソースをかけた延岡発祥の一品。昭和30年代、洋食店のまかない料理として作られた甘酢漬けの唐揚げが元になったとされ、今や宮崎を代表する味として広く知られる。
- えび天Ebiten愛媛県 新居浜市殻ごとすりつぶしたジャコエビを白身魚や豆腐と練り合わせ、油で揚げる東予の練り物。塩分を抑えて豆腐の甘みとエビの香りを立たせ、殻のジャリっとした歯ざわりが持ち味とされる。
- ふぐの唐揚げFugu no Karaage山口県しょうゆや酒で下味をつけたふぐを片栗粉で揚げる下関・萩の家庭料理。刺身や鍋には高級なトラフグが使われる一方、唐揚げには安価なシロサバフグが使われることが多いと伝わる。
- がっちょの唐揚げGaccho no Karaage大阪府大阪湾でよくとれる体長10〜20cmほどの小魚「がっちょ」(ネズミゴチなど)を松葉おろしにして片栗粉をまぶし揚げる。骨まで丸ごと食べられ、昔からおやつや酒肴として親しまれてきた泉州の特産という。
- がねGane鹿児島県さつまいもと野菜を太めの千切りにし、かにの姿に見立てて揚げた鹿児島の郷土料理。さつまいもが鹿児島弁で「がね」と呼ばれるかにに似ていることが名前の由来とされ、おやつとしても親しまれてきた。
- がんもどきGanmodoki京都府 京都市豆腐に野菜を混ぜて丸め揚げた一品。京都では「ひろうす」「飛龍頭」とも呼ばれ、肉を使わない精進料理の発想から、野菜を混ぜ込んで揚げる形に結びついたとみられる、京豆腐文化を代表する一皿である。
- がんすGansu広島県 呉市魚のすり身をパン粉で揚げた広島・呉の練り物。昭和20年代、蒲鉾製造で出るすり身の余りを活用する方法として考案されたとされ、揚げかまぼこにフライ衣をまとう独特の組み合わせを持つ、地元で長く愛される味である。
- はたはたの唐あげHatahata no Karaage兵庫県頭と内臓を取ったハタハタを丸ごと油で揚げる但馬地域の料理。うろこがなく調理しやすい魚とされ、朝鮮半島から回遊してくるため抱卵しておらず身に脂がのるという但馬産の特徴を生かした一品。
- ハトシHatoshi長崎県 長崎市食パンでエビとイカのすり身を挟んで揚げた長崎の郷土料理。明治時代に中国から伝わったとされ、卓袱料理の一皿から市中で親しまれる郷土食に育っていったと伝わる、開港地らしい一品である。
- いしもちじゃこの唐揚げIshimochi Jako Karaage岡山県瀬戸内で春から夏にとれる小魚、いしもちじゃこを頭ごと揚げた唐揚げ。身は少ないが骨ごと食べると、ほのかな甘みが感じられるという。塩をふってお酒のあてにも重宝される。既存の「唐揚げ」は一般的な調理法のページで、本品は特定魚種の別の郷土料理のため新規作成。
- じゃこ天Jako-ten愛媛県 宇和島市小魚のすり身を骨ごと揚げた愛媛の練り物。宇和島藩初代藩主が仙台から蒲鉾職人を連れてきて作らせたのが始まりとされ、雑多な小魚を余さず使う発想から名がついたと伝わる、南予地方の郷土食である。
- 湖魚の天ぷらKogyo no Tempura滋賀県小あゆやイサザ、ワカサギなど琵琶湖でとれる小魚を素揚げにする天ぷら。魚ごとに漁期が異なるため、組み合わせればほぼ通年味わえるとされ、揚げたては川魚特有の匂いが気にならないという。
- 鯉の唐揚げKoi no Karaage茨城県 行方市霞ヶ浦周辺で盛んな養殖ゴイを片栗粉で揚げた料理。骨まで食べられるため子どもにも人気で学校給食の定番。にぎわう養殖業を背景に、鯉こくや甘露煮と並ぶコイ料理の一つとして親しまれる。
- くじらの竜田揚げKujira no Tatsutaage山口県しょうゆやみりん、しょうが汁に漬け込んだクジラの赤身を片栗粉で揚げる山口の一皿。戦後の学校給食の定番として広く親しまれ、下関や長門など捕鯨で栄えた地域では今も飲食店の逸品と伝わる。
- 黒はんぺんフライKuro Hanpen Fry静岡県 焼津市鯖や鰺、鰯を骨や皮ごとすり身にした灰色の練り物、黒はんぺんに小麦粉と溶き卵、パン粉をまとわせて揚げる。白いはんぺんより魚の香りが濃く、衣の香ばしさが加わって、子どもから大人まで日常のおかずとして親しまれてきたとされる。
- 串カツKushikatsu大阪府 大阪市薄切り牛肉や野菜を串に刺し、衣をつけて揚げた大阪発祥の一品。新世界周辺で働く労働者の腹を手早く満たすため考案されたとされ、共有ソースの「二度づけ禁止」の作法でも知られる。
- めひかりの唐揚げMehikari no Karaage宮崎県 延岡市延岡市沖の日向灘、水深300m前後でとれる小魚メヒカリを、骨ごとまるごと揚げる料理。かつては雑魚扱いだったが、淡白な身とふんわりした食感を地元の料理人が引き出し、いまや延岡の名物になった。
- 長崎天ぷらNagasaki Tempura長崎県 長崎市魚介や野菜に砂糖や酒を加えた小麦粉の衣をつけ、カリッと揚げるフリッターに近い料理。南蛮貿易のポルトガル人が食べていた味付き衣の揚げ物が原型とされ、衣自体に味があるため天つゆをつけずに食べる。
- なまずの天ぷらNamazu no Tempura群馬県 板倉町利根川や渡良瀬川に囲まれた「群馬の水郷」板倉町の名物。皮ごと揚げたなまずはふっくらとした白身でクセが少なく、川魚問屋やその料理店が軒を連ねた町の食文化を今に伝えている。
- ねぶとの唐揚げNebuto no Karaage広島県 福山市瀬戸内海でとれる3〜5センチほどのテンジクダイ「ねぶと」に片栗粉をまぶして揚げ、塩を振る福山の一皿。頭が硬く丸ごとは食べにくいため頭を落として揚げ、おやつや酒の肴に親しまれる。
- お茶の葉天ぷらOcha no Ha Tempura宮崎県 日向市摘みたての新茶の若葉に薄く衣をつけてさっと揚げ、塩を振っていただく宮崎の初夏の料理。日照時間の長い宮崎は茶どころとして知られ、新茶の時期にしか味わえない地元ならではの一品とされる。
- 塩漬けタケノコの天ぷらShiozuke Takenoko no Tenpura千葉県 大多喜町塩抜きした大多喜産のタケノコを醤油だれで下味をつけ、卵と小麦粉の衣で揚げる一品。あくが少なく白いのが特徴の「白たけのこ」を塩漬けで保存し、旬を過ぎても年間を通して味わえるようにした知恵と伝わる。
- れんこんのはさみ揚げRenkon no Hasami-age茨城県 行方市輪切りのれんこんに具材を挟んで揚げた一品。霞ヶ浦・北浦周辺のれんこん産地・行方市で、豊富に穫れるれんこんを日々の惣菜として食べ尽くす食べ方の一つとして紹介されている、土地の恵みを生かした一皿である。
- サクラエビのかき揚げSakura Ebi no Kakiage静岡県 静岡市生の桜エビを小麦粉と水で溶いた衣にまとめ、油で揚げる。国内で桜エビが揚がるのは駿河湾のみとされ、由比港などの漁港周辺に限らず県内全域の家庭や飲食店でよくつくられる一皿とされる。
- 笹かまぼこの磯部揚げSasa Kamaboko Isobeage宮城県宮城名産の笹かまぼこに青のりを混ぜた衣をつけて揚げる一品。ヒラメなど白身魚のすり身を手のひら状に焼いた保存食が起源で、伊達家の家紋にちなみ笹かまぼこと呼ばれるようになったと伝わる。
- せんざんきSenzanki愛媛県 今治市若鶏を骨付きのまま一口大に切り、下味を漬けてから片栗粉をまぶして揚げる今治の唐揚げ。骨から出る旨味が味を深めるとされ、祝い事から弁当まであらゆる場面で食べられているという。
- シャクの天ぷらShaku no Tempura熊本県干潟の深い巣穴にすむシャク(アナジャコ)に衣をつけ、殻ごとからりと揚げた夏の珍味。鮮度落ちが早く熊本県外にはほとんど流通せず、身も殻も内臓も食べられ濃い味わいが特徴とされる。
- 白魚のかき揚げShirauo no Kakiage島根県 松江市宍道湖でとれる透き通った白魚を、たけのこや菜の花などの旬の野菜と揚げたかき揚げ。ふわりとした衣の中に淡白な白魚の旨味が広がり、うどんや天丼の種として親しまれている。既存の「かき揚げ」は一般的な調理法のページで、本品は宍道湖の白魚を使う別の郷土料理のため新規作成。
- 白えびのかき揚げShiroebi no Kakiage富山県富山湾でのみまとまった漁獲があるとされるシロエビを、タマネギやニンジンと衣で揚げる。火を通しても赤くならず、揚げたてはサクサクとした食感と上品な甘さが楽しめる名物のかき揚げ。
- しそ巻きShiso-maki宮城県 大崎市味噌とくるみの餡を青しそで巻いて揚げた宮城の郷土料理。鳴子温泉の湯治客のために伊達政宗が作らせたという言い伝えがあり、砂糖を加えておやつとしても食べられるようになったとされる、味の濃い一品である。
- すり身揚げSurimi Age富山県アジやニギスなど旬の魚のすり身に、すりおろした長芋や野菜を混ぜて揚げる。外はカラッと中はふわふわとした食感が特徴とされ、氷見では「ととぼち揚げ」とも呼ばれおでんの具にもなる。
- 竜田揚げTatsuta-age奈良県 生駒郡三郷町醤油で下味をつけた鶏肉に片栗粉をまとわせて揚げた一品。揚げ色と片栗粉の白いむらが、紅葉の名所として知られる奈良の竜田川に見立てられて名づけられたとされる、から揚げとは違う軽い食感の揚げ物である。
- とんかつTonkatsu東京都 中央区豚肉に衣をつけて揚げ、キャベツを添えた一皿。明治期に銀座で開業した洋食店がカツレツを手がけ、キャベツの千切りを添えるなどの工夫を重ねたと伝わる、洋食由来の代表格。
- とり天Tori-ten大分県 別府市骨を外した鶏肉に天ぷら風の軽い衣をつけて揚げた別府発祥の一品。骨付きの唐揚げを女性でも食べやすいようアレンジしたのが始まりとされ、酢橘や辛子酢醤油を添えて食べる軽やかな一皿である。
- ザンギZangi北海道 釧路市醤油ベースのタレに漬け込んだ鶏肉を揚げた釧路発祥の一品。昭和30年頃、末広の鶏料理店が考案したとされ、下味をしっかりつける点がから揚げとの違いとして知られる、味の濃い揚げ物である。
- ゼリーフライZerii Furai埼玉県 行田市おからとじゃがいもを主体に、にんじんやねぎを混ぜて小判形に整え、衣なしで揚げてソースにくぐらせた行田市のおやつ。小判に似た形から「銭フライ」がなまって名付けられた。
発祥の土地を特定しないもの8
- アジフライAji Fry三枚におろしたアジにパン粉をつけて揚げた洋食。千葉県は全国有数のアジの水揚げ量を誇り、脂の乗った「黄金アジ」など地域ブランドの魚を新鮮なまま手早く食べる方法として根づいたとみられる家庭の定番である。
- いかメンチIka Menchiいかのゲソを叩いて野菜と揚げた津軽地方の家庭料理。終戦直後の食糧難の時代、いかを無駄なく使い切る工夫として考案されたとされ、今では青森のソウルフードとして幅広い世代に親しまれている。
- カキフライKaki Fryむき身の牡蠣にパン粉をつけて揚げた洋食。牡蠣の一大産地・広島県では家庭で日常的に作られる料理とされ、県外ではとんかつ屋などで季節限定のごちそうとして扱われる違いがあるという、土地によって顔が変わる一皿。
- かき揚げKakiage小さな魚介や野菜を衣でまとめて揚げた天ぷらの一種。旬の小魚や細切り野菜を無駄なく使い切る工夫から生まれたとみられ、うどんや天丼の定番の種物として広く親しまれている。
- コロッケKorokkeじゃがいもと挽き肉を混ぜて衣をつけて揚げた洋食。大正期、フランスのクロケットとイギリス由来のじゃがいも料理が合わさり、とんかつ・カレーライスと並んで家庭に定着した洋食の一つとされる。
- 南蛮漬けNanban-zuke揚げた小魚を甘酢に漬け込んだ料理。冷蔵庫のない時代、揚げてから酢に漬けることで保存性を高める知恵として、漁業の盛んな土地ごとに根づき、各地の郷土料理として今も伝わっている、酸味の効いた一皿。
- さつま揚げSatsuma-age魚のすり身に豆腐や砂糖を混ぜて揚げた鹿児島の練り物。地元では「つけあげ」と呼ばれ、島津斉彬が保存性を高めるため揚げ物にしたという説と、琉球料理由来という説が伝わる、甘口が特徴の一品である。
- 天ぷらTempura魚介や野菜に衣をつけて揚げた料理。16世紀にポルトガルから伝わった南蛮料理が原点とされ、江戸で発展した系統と長崎で根づいた系統とで、衣の作り方が大きく異なるとされる。
食べに行く前に
チェーンの味の元になった料理
全国チェーンの味は、特定の土地の料理がもとになっているとされます。チェーン名から元の料理を見られます。
とんかつ和幸は1958年創業のとんかつ専門店とされる。コロッケも同じ衣揚げの系統に連なる、明治以降に広まった洋食由来の揚げ物にあたる。
とんかつさぼてんは東京・新宿で生まれたとんかつ専門店とされる。カキフライも同じ衣揚げの系統に連なる、明治以降に広まった洋食由来の揚げ物にあたる。
かつくらは京都で生まれたとんかつ専門店とされる。コロッケも同じ衣揚げの系統に連なる、明治以降に広まった洋食由来の揚げ物にあたる。
松のやは、東京・練馬で牛めし・焼肉定食店として始まった松屋フーズグループが手がけるとんかつ専門店とされる。カツ丼はそのとんかつを丼にした食べ方にあたる。
からやまは神奈川県相模原市で生まれたからあげ専門チェーンとされる。北海道にはザンギという、からあげとほぼ同じ調理法ながら別の名で呼ばれる郷土の唐揚げがある。
から好しはすかいらーくグループが展開するからあげ専門店とされる。宮崎にはタルタルソースをかけたチキン南蛮という、からあげから派生した郷土の鶏料理がある。
鶏笑はフランチャイズ形式で全国に広がったからあげ専門店とされる。愛媛にはにんにく・しょうがで下味をつけた骨なしのせんざんきという、からあげから派生した郷土の鶏料理がある。
総本家もり山は、からあげの町として知られる大分県中津市で生まれたからあげ専門店とされる。下味をしっかりつけてから粉をまとわせ揚げる点は、しょうゆと生姜だれで下味をつける竜田揚げとも通じる調理法とされる。
天ぷら定食まきのは兵庫で生まれ、揚げたての天ぷらを一品ずつ出す形式にこだわるチェーンとされる。えび天やかき揚げは、そのてんぷらのうち特によく食べられる定番の具にあたる。
串カツ田中は東京・世田谷で生まれた串カツ専門の居酒屋チェーンとされ、そのレシピは大阪・西成の串カツ屋のものを再現したとされる。とんかつも同じ衣揚げの系統に連なる、明治以降に広まった洋食由来の揚げ物にあたる。