麺
うどん
39種
うどんにも同じく二つの型がある。讃岐うどんの強いコシ、稲庭うどんの手延べ乾麺のように、産地と結びついた「地域の型」。そして、手で打つか延ばすかという製法、釜揚げ・釜玉・ぶっかけ・かけといっただしとの合わせ方、カレーや肉、力もちをのせる食べ方という、土地を問わない「打ち方と食べ方の型」である。ゆでたてを水で締めるか、そのまま丼へ移すかという一手間の違いだけで、麺の食感も名前も変わる。ここでは後者の、打ち方とだしとの合わせ方という構造を、ご当地のうどんとあわせて辿る。
土地ごとの料理26
- ちたけうどんChitake Udon栃木県栃木県で盆の頃に食べられる、ちたけ(乳茸)となすを炒めただし汁にうどんを入れる料理という。盆行事で打たれるうどんと、夏にだけ採れるきのこが重なって生まれた一杯とされる。
- 五島うどんGoto Udon長崎県 南松浦郡新上五島町長崎県新上五島町で作られる手延べうどん。遣唐使が伝えた製法が起源とされ、島の椿油を使って延ばすことでコシとつるりとした喉ごしが生まれる。
- 群馬のうどんGunma no Udon群馬県粉食文化が根づく群馬各地で育った、うどんの総称。桐生市の幅広麺「ひもかわ」、館林のうどん、水沢うどんなど地域ごとに個性があり、観光グルメとしても親しまれている。
- 博多うどんHakata Udon福岡県 福岡市博多区中国から製粉技術を持ち帰った聖一国師にゆかりのある承天寺周辺で広まったとされる。柔らかい麺とやさしい出汁に、ごぼう天や丸天をのせる店が多い。
- 氷見うどんHimi Udon富山県 氷見市富山県氷見市で江戸時代中期、輪島の素麺の技法を取り入れて作られ始めた手延べうどん。加賀藩への献上品でもあった。
- 稲庭うどんInaniwa Udon秋田県 湯沢市稲庭町秋田県湯沢市稲庭町に伝わる手延べの乾麺うどん。江戸時代には秋田藩主への献上品とされ、長年製法が一子相伝で守られてきた。
- 伊勢うどんIse Udon三重県 伊勢市伊勢神宮の参拝客をもてなす茶店で提供されてきたうどん。極太で柔らかい麺に、たまり醤油ベースの黒く濃いたれをからめて食べる。
- 加須うどんKazo Udon埼玉県 加須市利根川の渡し場や總願寺の門前で参拝客をもてなしたことに始まるとされる埼玉県加須市のうどん。通常より多く踏み込み、寝かせることでコシを引き出す。
- 桐生ひもかわうどんKiryu Himokawa Udon群馬県 桐生市桐生の「ひもかわ」は幅十センチを超えることもある帯状のうどんで、すするというより舌で受け止めるような食感になるという。醤油だしのつゆにくぐらせて食べる、群馬の粉食文化が生んだ一杯とされる。
- きしめんKishimen愛知県 名古屋市江戸時代の史料に「江戸のひもかわを尾張ではきしめんという」と記された、幅の広い平打ち麺。名古屋を中心とした愛知県で広く食べられている。
- きつねうどんKitsune Udon大阪府 大阪市大阪の船場で生まれたとされる、甘辛く煮た油揚げをうどんにのせる一杯という。真昆布と雑節のだしに、太すぎずもっちりとした麺を合わせる大阪うどんの型として親しまれている。
- 耳うどんMimi Udon栃木県 佐野市仙波町栃木県佐野市仙波町などに伝わる正月料理。うどん生地を鬼の耳に見立てて折りたたみ、一年間悪いことが聞こえないようにとの願いが込められている。
- 味噌煮込みうどんMiso Nikomi Udon愛知県 一宮市明治初期に一宮市の飲食店で提供され始めたとされる愛知県の郷土料理。豆味噌仕立ての汁でコシの強い麺を煮込み、土鍋のまま供する。
- 水沢うどんMizusawa Udon群馬県 渋川市伊香保町水沢群馬県渋川市の水澤観音の門前で参拝客に振る舞われたのが始まりとされる。透明感のある細めの麺を、しょうゆだれやごまだれにつけて食べる。
- 武蔵野うどんMusashino Udon東京都 小平市(武蔵野台地)水が乏しい武蔵野台地で米の代わりに小麦が栽培され、冠婚葬祭の振る舞いとして根付いたうどん。濃いめのしょうゆだれの肉汁につけて食べる。
- 煮ぼうとうNibouto埼玉県 深谷市埼玉県深谷市に伝わる、幅広く平たい生麺を茹でずにそのまま汁に入れて煮込むうどんという。溶け出した打ち粉が汁にとろみをつけ、山梨のほうとうとは違う醤油仕立てに仕上がるとされる。
- にごみうどんNigomi Udon神奈川県 相模原市緑区津久井神奈川県相模原市津久井地域に伝わる、大根や小松菜などの野菜と一緒に生のうどんを汁で直接煮込む料理という。稲作に向かない土地で小麦が主食になった歴史を背景に持つとされる。
- のしこみうどんNoshikomi Udon東京都 西多摩郡奥多摩町東京都奥多摩町に伝わる、煮干しとしいたけのだしに酒・塩・醤油で味をつけた汁にうどんを入れて煮込む料理という。山仕事から戻った男性に手早く出す食事として根づいたとされる。
- おしぼりうどんOshibori Udon長野県 埴科郡坂城町長野県坂城町に伝わる、辛味の強いねずみ大根をおろして絞った汁に信州味噌を溶き、うどんをつけて食べる料理という。汗をかくほどの辛さを、まろやかな味噌で受け止めるのが持ち味とされる。
- 埼玉のうどんSaitama no Udon埼玉県小麦生産量全国有数の埼玉で育った、うどんの総称。北東部はコシの強い手打ち麺、西部は濃いつけ汁、川沿いは幅広麺と地域色が豊かで、20種類以上のご当地うどんがある。
- 讃岐うどんSanuki Udon香川県 綾川町(滝宮)空海が唐から製法を持ち帰ったと伝わる香川県のうどん。強いコシと澄んだいりこ出汁が特徴で、県内には自分で麺を茹でるセルフ式の店も多い。
- しっぽくうどんShippoku Udon香川県香川県で秋から冬にかけて食べられる、数種の野菜と油揚げを煮干しだしで煮込み、うどんにかけて食べる料理という。讃岐うどんのコシに、冬野菜の甘みを重ねた一杯とされる。
- 館林うどんTatebayashi Udon群馬県 館林市館林は「百年小麦」と呼ばれる地元産小麦にこだわるうどんの町で、釜から上げた麺に卵を絡める釜玉うどんが名物とされる。小麦どころとして粉食が根づいた群馬の一角にある一杯という。
- 年明けうどんToshiake Udon香川県白いうどんに梅干しやイクラ、紅しょうがなど紅い食材を添え、1月15日までに食べる新しい麺食行事。さぬきうどん振興協議会が、太く長いうどんの縁起にちなんで広めた取り組みだという。
- 津山ホルモンうどんTsuyama Horumon Udon岡山県 津山市岡山県津山市で、牛馬市が開かれてきた土地の食肉処理の技術を背景に育った、ホルモンとうどんを鉄板で炒め合わせる一杯という。店ごとに違うたれで味を競い合ってきたとされる。
- 吉田のうどんYoshida no Udon山梨県 富士吉田市富士山麓の富士吉田市に伝わる、非常に硬くコシの強い麺のうどん。織物業が盛んだった土地柄、女性が仕事の合間に食べやすいよう男性が作った説がある。
発祥の土地を特定しないもの13
- ぶっかけうどんBukkake Udon茹でた麺を冷水で締め、濃いめのつけだしを直接ぶっかけて食べるうどん。ねぎや大根おろしをのせ、具材ごと大胆にかき混ぜて食べるのが定番とされる。温かいだしを使う温ぶっかけの形もあるという。
- 力うどんChikara Udonかけうどんに焼き餅をのせたうどん。餅は米飯よりもカロリーが高く「力が出る」食べ物とされてきたことが名の由来と伝わる。近畿地方では餅を指す女房言葉「おかちん」から「かちんうどん」とも呼ばれるという。
- カレーうどんCurry Udonだしとカレーを合わせたつゆを熱々の麺にかけたうどん。西洋から伝わったカレー粉を、和風のだしと組み合わせて仕立てるとされる。とろみのあるつゆが麺によくからみ、汁が飛びやすいことから食べ方にもひと工夫いるという。
- 冷やしうどんHiyashi Udonざるやぶっかけ、生じょうゆといった冷たい食べ方をまとめて指す呼び名。冷水で締めた麺に、常温のだしよりも濃いめに仕立てただしや薬味を合わせるのが基本とされる。夏場に食が進みやすい食べ方として好まれるという。
- かけうどんKake Udon茹でた麺を一度冷水で締め、温め直してだしをかける、もっとも基本的なうどん。いりこや鰹の効いただしは店ごとに違うとされ、ねぎや天かすといった軽い薬味だけをのせるのが定番という。
- 釜揚げうどんKamaage Udon釜で茹で上がった麺を、水で締めずにゆで汁ごと器へ移して食べるうどん。冷水で締めないぶんふんわりとした食感になるとされ、つけだしに少しずつつけながら食べるのが定番という。
- 釜玉うどんKamatama Udon釜で茹で上がった麺を水で締めずに器へ移し、生卵と醤油を絡めて食べるうどん。混ぜると熱々の麺に卵がとろりとからみ、香りとコクが立つとされる。釜揚げに卵と醤油を加えた食べ方として広まったという。
- 鍋焼きうどんNabeyaki Udon一人前用の小さな土鍋でうどんを煮込み、そのまま食卓に出すうどん。元治2年(1865年)初演の芝居の台詞に記録が残るとされ、大坂の屋台から明治6、7年ごろ東京へ伝わったという。冬場に人気のうどんとされる。
- 肉うどんNiku Udonかけうどんに甘辛く味付けした牛肉をのせたうどん。だしの効いたつゆに、しっかり煮込んだ牛肉の旨みが溶け出すとされる。地域によっては牛すじや牛ほほ肉を使うなど、使う部位や味付けに違いがあるという。
- 手延べうどんTenobe Udon生地に食用油やでん粉を塗って撚りをかけながら引き延ばし、乾燥させて作る乾麺のうどん。包丁で切る手打ちと違い、麺線の断面が丸くなめらかな喉ごしになるとされる。製法の途中に熟成の工程を挟むことが日本農林規格で定められているという。
- 天ぷらうどんTenpura Udonかけうどんに天ぷらをのせたうどん。えび天が定番の具材とされ、江戸時代からそば屋の種物として天ぷらをのせる食べ方が広まったのと同じ流れが、うどんにも及んだと考えられている。
- 手打ちうどんTeuchi Udon小麦粉に塩水を加えて練り、足で踏んで生地を鍛え、包丁で切るうどん。踏み・延ばし・折りたたみを繰り返すことでグルテンの網目構造が育ち、強いコシと弾力が生まれるとされる。生麺として供されるのが基本という。
- ざるうどんZaru Udon茹でた麺を冷水で締め、ざるなどの器に盛って濃いめのつけだしにつけて食べるうどん。薬味には生姜やねぎ、ごまを添えることが多いとされる。かけうどんに対する冷たいうどんの基本形の一つという。
食べに行く前に
チェーンの味の元になった料理
全国チェーンの味は、特定の土地の料理がもとになっているとされます。チェーン名から元の料理を見られます。
丸亀製麦の店内製麦と釜湯げは、讃岐の製麦所やセルフうどん店の形式を全国に広めたものとされる。
はなまるうどんのカジュアルな内装とセルフスタイルは、讃岐うどんの製麦所文化を、若い世代にも入りやすい形で全国へ広めたものとされる。
牛のうどん福岡県の地域限定
牛のうどんの長時間ゆでたやわらかい麦と甘口のだしは、博多うどんに連なる福岡・糸島地方のうどん文化の一系統とされる。
ウエスト福岡県の地域限定
ウエストのうどんは、ドライブインの複合飲食業態から生まれたもので、博多うどんに連なる福岡のやわらかい麦とだしの系統を、ロードサイドの形で広めたものとされる。
資さんうどん福岡県の地域限定
資さんうどんのごぼ天うどんは、博多うどんに連なる福岡のやわらかい麦の系統に、北九州で好まれてきたごぼ天という具材を組み合わせたものとされる。
杓屋の実演手打ちうどんは、創業者が香川に通って学んだ讃岐うどんの手打ち製法を、店内で実演する形で全国に広めたものとされる。
山田うどん食堂埼玉県の地域限定
山田うどんの太く弾力のある麦は、埼玉・北関東の農村部で食べられてきた、武蔵野うどんに連なる手打ちの太麦文化を、食堂形式で広めたものとされる。
伊予製麦の店内製麦・釜湯げは、店名に「伊予」を掛げつつも、丸亀製麦などと同じく讃岐うどんのセルフスタイルを全国に広めた店の一つとされる。
つるまるうどんの店内製麦・セルフスタイルは、讃岐うどんの製麦所文化を、フードコートや路面店の形で全国に広めるものとされる。
味の民芸の手延べうどんは、氷見うどんなどに見られる、生地を細く引き延ばして作る手延べ製法のうどん系統を、和食メニューと合わせたファミリーレストランの形で全国に広めたものとされる。