麺 ── うどん
きしめん
Kishimen
江戸時代の史料に「江戸のひもかわを尾張ではきしめんという」と記された、幅の広い平打ち麺。名古屋を中心とした愛知県で広く食べられている。
- 発祥: 愛知県名古屋市
- 東京から西へ約270km
愛知県名古屋市
何でできているか
小麦粉だけで作った真っ平らな麺で、幅は8〜10mm、厚みは1mmほどしかない。日本農林規格でもうどんとは別の形として定義されているほど、丸いうどんとは別物とされる。薄く広いぶんタレをよく含み、たまり醤油を効かせただしと合わさると、口に入れた瞬間につゆの香りがふわりと立つ。青ねぎ、味付け油揚げ、かつお節をのせるのが定番で、つるりとした喉ごしの奥に、噛むとやわらかな腰が残る。
どう作るのか
作り方はうどんとほぼ同じだが、途中で生地を薄く延ばす工程の回数が違う。塩水でこねた生地を足で踏んで鍛え、一晩寝かせたのち、うどんなら6〜8回で済む麺棒の巻き戻しを、きしめんでは細い麺棒を使って8〜10回繰り返し、より薄く延ばす。屏風だたみにして駒板を当て、幅8〜10mmに切り出す――この「薄く広く」仕立てる一手間が、うどんとの分かれ道になる。
なぜこの形になったのか
名前の由来には諸説あり、江戸時代の史料は「江戸のひもかわを尾張ではきしめんという」と記す一方、雉肉を使った「きじめん」説、紀州出身の者が名付けたという説、中国伝来の「棊子麺」がなまったという説も伝わるが、いずれも確証はない。ただ、たまり醤油の産地である尾張では濃く仕立てただしを麺にまとわせる食べ方が好まれてきたとされ、薄く広い麺はその味の濃さを受け止めるための形とも読める。
食べに行く前に
同じ系統の料理
この土地の食材と料理
同じ愛知県
- ふな味噌フナを大豆とともに弱火で5時間ほど煮こんでから、豆味噌と砂糖のたれで仕上げる。木曽三川下流域の川魚料理で、12月後半から1月にとれる寒ブナが脂がのって美味とされ、骨まで柔らかくなるまで煮こむとされる。
- 五平餅炊きたてのうるち米を潰して串に刺し、味噌だれをつけて焼き上げる。中部地方の山間部発祑とされ、山仕事の安全を祈る祭りの前夜につくられてきたと伝わる、奥三河をはじめ中部山間部一帯の料理とされる。
- 箱ずし木枠に酢飯を詰め、エビやアナゴ、干ししいたけ、錦糸卵などを斜めに配置して押しかためる。皆が平等にさまざまな味を楽しめるよう具材を斜めに置くのが尾張・西三河地域の特徴とされ、祝い事でつくられてきたとされる。
- へぼ飯地蜂(クロスズメバチ)の成虫と幼虫を甘辛く煮つけ、炊きたてのごはんに混ぜ込む。信州から奥三河の山間部にかけて貴重なタンパク源とされてきたと伝わり、現在はごちそうとして客人にふるまわれるとされる。
- いがまんじゅう米粉の生地で粒あんを包み、表面に着色したもち米をつける。もち米の粒が栗の「いが」に似ることが名の由来の一説とされ、西三河地域では桃の節句にお雛様へ供える風習が伝わる。
- 味噌おでん土鍋の中央に味噌だれの壺を置き、大根や豆腐などをだしで煮てから壺の味噌につけて食べる。江戸で醤油だしの「関東煮」が広まる一方、愛知では豆味噌(八丁味噌)をつけて食べる方法が根づいたと伝わる。