麺 ── うどん
吉田のうどん
Yoshida no Udon
富士山麓の富士吉田市に伝わる、非常に硬くコシの強い麺のうどん。織物業が盛んだった土地柄、女性が仕事の合間に食べやすいよう男性が作った説がある。
- 発祥: 山梨県富士吉田市
- 東京から西へ約90km
山梨県富士吉田市
何でできているか
箸で持ち上げてもびくともしない太くて硬い麺は、噛むというより歯を押し返してくる強さがある。みそとしょうゆを合わせただしはこっくりと濃く、甘辛く煮た馬肉やゆでキャベツが麺のあいだに沈む。麺の硬さと具の甘辛さが噛むたびに交互に立ち上がり、仕上げにごまや山椒、唐辛子を合わせた「すりだね」をひとふりすると香りが一段と立つ。食べ終える頃には額に汗がにじむほど、体の芯まで温まる一杯だ。
どう作るのか
生地は水を控えめにして硬めにこね、力を込めて何度も踏み込むことでコシを最大限まで引き出す。太めに切った麺は歯ごたえがしっかり残る硬さでゆっくり茹で上げ、みそとしょうゆを合わせただしを張った丼へ、キャベツと甘辛く煮た馬肉をのせて仕上げる。薬味のすりだねは食べる直前に自分の好みで加減しながらふりかける。
なぜこの形になったのか
一説によると、この土地はかつて機織りが主な仕事で、女性は機の前を離れられなかった。代わりに男を昼食づくりに立たせ、腹持ちがよく短時間で作れる一杯として、力任せにこねた硬い麺のうどんが定着したという。手荒れを避けたい織り手の事情も重なったとされる。富士山麓の冷え込む土地で仕事の合間にすぐ体を温められる一杯という点も、この麺の硬さと濃いだしを後押ししたと読める。
食べに行く前に
同じ系統の料理
この土地の食材と料理
対比
使う
同じ山梨県
- あけぼの大豆の枝豆通常の1.6倍という大粒の「あけぼの大豆」を塩ゆでにする身延町曙地域の枝豆。明治から続く在来種だが機械化になじまず生産者の高齢化で希少となり、「幻の大豆」とも呼ばれてきたと伝わる。
- 甘納豆のお赤飯ささげや小豆を使わず、食紅で赤く色づけたもち米に甘納豆を混ぜ込む山梨の赤飯。ごま塩をかけると甘じょっぱく、祝いの席に欠かせないとされる。同様の甘い赤飯は遠く離れた北海道や東北の一部にもあると伝わる。
- あんびんさつまいも粉と小麦粉を熱湯でこね、あんを包んで叩いて平らにし蒸す峡南地域の菓子。あんを叩き入れる仕草が名前の由来とされ、廃校を機に地元が復活させた市川三郷町六郷の伝統食と伝わる。
- あわびの煮貝駿河湾でとれたアワビを醤油に漬けて樽で運び、馬の体温に揺られるうちに味がしみ込んだという甲州の名産。薄切りにして肝と盛り合わせ、しそやきゅうりを添えて食べると伝わる、海のない山梨に残る海の幸。
- 小豆ほうとう太めに切ったほうとう麺を、餅の代わりに小豆の汁粉に入れて煮る山梨の行事食。北杜市須玉町若神子の三輪神社の夏祭りは「ほうとう祭り」と呼ばれるほどで、赤い小豆の色が厄除けになるとされる。
- 平打ちタンメン山梨県甲府市発祥とされる、幅広の平打ち麺を使った塩味のタンメン。もやしや豚肉、白菜などの野菜がたっぷりのり、フェットチーネのような麺の食感が持ち味とされる。県内の複数の店に受け継がれている。