麺 ── うどん
稲庭うどん
Inaniwa Udon
秋田県湯沢市稲庭町に伝わる手延べの乾麺うどん。江戸時代には秋田藩主への献上品とされ、長年製法が一子相伝で守られてきた。
- 発祥: 秋田県湯沢市稲庭町
- 東京から北へ約400km
秋田県湯沢市稲庭町
系譜
何でできているか
光にかざすと透き通るような白さを見せる、平打ちの乾麺。原料は小麦粉と食塩、打ち粉に使う澱粉だけとシンプルだが、小麦粉に対して食塩水を55%以上加えて練り上げる加水の多さが特徴で、これがなめらかな舌ざわりとしっかりとしたコシを生む。ゆでるとつるつるとした喉ごしとしこしことした歯ごたえが同時に立ち上がり、見た目の繊細さとは裏腹に食べ応えのある一本になる。
どう作るのか
練った生地を一晩休ませたあと、細く切って紐状にし桶の中で渦を巻くように巻き込む「小巻き」を経て、二本の棒に八の字にかけながら少しずつ引き延ばす「手綯い」を行う。合間に何度も熟成の時間を挟み、麺線をつぶし棒で平らにしてから干し台でさらに延ばして乾燥させる。その日の気温や湿度で塩加減を微調整しながら、仕込みから完成まで3〜4日をかける、手間を惜しまない工程だ。
なぜこの形になったのか
稲庭は奥羽山脈に囲まれた豪雪地帯で、雪に閉ざされる生活が半年にも及ぶ。一説によると、その冬を越すための保存食として小麦の栽培が始まり、日持ちする乾麺へと工夫が重ねられていったのが稲庭うどんの起こりとされる。何日もかけて熟成と乾燥を繰り返す製法は、長い冬を見越して手間と時間を惜しまなかった土地の知恵の表れと読める。江戸期には藩主への贈答品にもなった。
食べに行く前に
同じ系統の料理
この土地の食材と料理
対比
同じ秋田県
- 赤ずし(赤漬け)炊いたもち米を赤じそと酢で漬け込み、短く発酵させる秋田の郷土ずし。魚を使わない植物性のなれずしで、お盆に仏前へ供える行事食としても伝わる、酸味の穏やかな夏の一皿。
- あさづけ砕け米をすりつぶして煮た生地を砂糖と酢で味付けし、きゅうりやかぶ、季節の果物を混ぜた甘酸っぱいデザート。一般的な漬物の「浅漬け」とは別物で、田植えを終えた女性たちを癒やす夏の一品と伝わる。
- 江戸系ラーメン醤油ラーメンの表面に、ニラとニンニクを効かせた真っ赤な辛味噌がひとかたまり乗る。溶かしながら食べ進めるうち、あっさりした一杯が少しずつ濃く辛く変わっていく秋田市のご当地ラーメン。
- 干し餅切った餅を吊るし編みにして水に浸し、冬の寒さで凍らせては乾かす「寒締め」を経て作る保存菓子。さくさくとした歯ごたえが持ち味で、腹持ちがよく、田植えの合間の軽食として食べられてきたと伝わる。
- いものこ汁里芋の子芋や孫芋「いものこ」を、鶏肉やきのこ、山菜とともに味噌や醤油で煮た秋の汁物。横手市山内地域特有の土壌で育つ里芋は柔らかな歯ごたえが特徴で、県北のきりたんぽ鍋と対比される郷土料理と伝わる。
- 秋田の酒軟水を使い、灘の硬水とは対照的にまろやかで細やかな酒質を目指すとされる秋田の酒。雪に埋もれた蔵が保温効果を持つことを生かし、低温でじっくり発酵させる造りが伝統として続いているという。