酒
日本酒
28種
日本酒は米・水・麹・酵母だけから生まれる醸造酒で、「米をいかに美味しく食べるか」という日本食の問いを、粒のまま炊く代わりに醸すという形で答えたものとも言える。精米歩合や麹の造り方、酒母の起こし方で味の骨格が決まり、水の硬度や気候、杜氏という職人集団の移動が、土地ごとの酒質を分けてきたとされる。ここでは銘柄ではなく、型・技法・産地の水と気候という、飲む前に知ると一口が変わる構造を辿る。
土地ごとの料理9
- 秋田の酒Akita no Sake秋田県 秋田市軟水を使い、灘の硬水とは対照的にまろやかで細やかな酒質を目指すとされる秋田の酒。雪に埋もれた蔵が保温効果を持つことを生かし、低温でじっくり発酵させる造りが伝統として続いているという。
- 伏見の酒Fushimi no Sake京都府 京都市伏見区京都・伏見の酒。桃山丘陵から湧く地下水に恵まれた地で、灘の硬水に対して柔らかな水質から仕込まれるとされ、丸みのある口当たりと膨らみのある甘みを持つ、地理的表示「GI京都」の酒質と重なるという。
- 広島の酒Hiroshima no Sake広島県 東広島市軟水では酒が腐造しやすいという弱点を、麹をしっかり育て低温でゆっくり発酵させる「軟水醸造法」で克服したとされる広島の酒。この技法は後の吟醸酒の誕生にも影響を与えたと伝わる。
- 石川の酒Ishikawa no Sake石川県 珠洲市能登半島の珠洲市周辺を発祥とする能登杜氏の土地。農業に不向きな土地から近畿地方へ酒造りの出稼ぎに出た「能登衆」の系譜とされ、味の濃い酒質を特徴とする「能登流」として知られてきたという。
- 岩手の酒Iwate no Sake岩手県 花巻市石鳥谷町南部杜氏の発祥地とされる岩手県の酒。紫波郡紫波町を発祥とし花巻市石鳥谷町を拠点に発展した杜氏集団で、美しい自然とうまい米・うまい水に恵まれた土地で古くから酒造りが盛んだったと伝わる。
- 灘の酒Nada no Sake兵庫県 神戸市灘区兵庫県の灘五郷で仕込まれる酒。ミネラル分が多く鉄分が少ない中硬水「宮水」を使い、発酵が力強く進むことから、辛口で骨太な「灘の男酒」と呼び習わされてきたとされる。
- 新潟の酒Niigata no Sake新潟県豪雪地帯として知られる新潟県の酒。冬の農閑期に酒造りへ出稼ぎに出た越後杜氏の系譜が各地に技術を広め、県内では成人一人当たりの清酒消費量が全国で最も多いとされる、酒どころとして知られる土地。
- 丹波の酒Tanba no Sake兵庫県 丹波篠山市兵庫県丹波篠山市周辺を発祥とする丹波杜氏の土地。灘の蔵元たちが育て上げた杜氏集団とされ、天保年間には灘の蔵の多くが丹波杜氏で占められるまでになったと伝わる、水ではなく人の技術で語られる酒どころ。
- 山形の酒Yamagata no Sake山形県鳥海・朝日・月山など複数の山系から異なる水質の名水が湧く山形県の酒。山系ごとに水が違うため蔵ごとの個性が際立ちやすく、高級酒・吟醸酒の出荷割合が高い県としても知られるとされる。
発祥の土地を特定しないもの19
- 大吟醸酒Daiginjo-shu精米歩合50%以下まで磨いた米に醸造アルコールを加えて造る清酒。特定名称酒の中でも最も磨き込みが深く、際立った香りと軽い口当たりを狙った、鑑評会向けの高度な仕込み技術から生まれた造りとされる。
- どぶろくDoburoku米・米麹・水を発酵させただけで、漉す工程を経ない酒。漉さないぶん米のでんぷんや糖が残ってほのかに甘く、酒税法上は清酒ではなく「その他の醸造酒」に分類されるとされる。
- 原酒Genshu搾った清酒に水を加えず、そのまま瓶詰めした酒。通常の清酒はアルコール度数を15度前後に調整するため加水するが、原酒はこれを行わないためアルコール度数が18度から20度前後と高く、味も濃厚になるとされる。
- 吟醸酒Ginjo-shu精米歩合60%以下まで磨いた米に醸造アルコールを加え、低温でゆっくり発酵させる清酒。果実を思わせる香りが立ちやすく、軽やかな口当たりになるとされ、香りを競う品評会の中で磨かれてきた技法という側面も持つ。
- 発泡清酒Happo Seishu炭酸ガスを含ませた発泡性の清酒。低いアルコール度数と軽い口当たりに仕立てられることが多く、シャンパンのような泡立ちを楽しむ酒として、乾杯や食前酒の場面で選ばれることが多いとされる。
- ひやおろしHiyaoroshi冬から春にかけて搾った酒を、火入れを一度だけ施して夏の間蔵で寝かせ、外気温が下がる秋になってから出荷する清酒。夏を越す間に角が取れ、まろやかに熟成しているとされる。
- 本醸造酒Honjozo-shu精米歩合70%以下の米に、白米重量の10%以下という上限で醸造アルコールを少量加えて造る清酒。香りが軽くなり、すっきりとした後味になりやすいとされ、特定名称酒の中では最も精米基準がゆるい入り口の区分とされる。
- 純米酒Junmai-shu米と米麹と水だけで造られ、醸造アルコールを加えない清酒。副原料に頼らない分、米そのものの旨みと重さがそのまま酒質に出るとされ、精米歩合の一律の基準は法律上は定められていない、特定名称の中でも最も原初的な区分とされる。
- 純米大吟醸酒Junmai Daiginjo-shu精米歩合50%以下まで磨いた米だけで造る清酒。米粒の半分以上を削り落とすため雑味が少なく、吟醸造りの低温発酵と合わさって際立った香りが出るとされる、特定名称の中でも最も磨き込みの深い区分。
- 純米吟醸酒Junmai Ginjo-shu精米歩合60%以下まで磨いた米だけで、醸造アルコールを加えずに造る清酒。吟醸造りと呼ばれる低温でゆっくり発酵させる仕込みにより、果物のような香りが立ちながらも、米の旨みは純米酒に近く残るとされる。
- 貴醸酒Kijoshu仕込み水の一部を清酒に置き換えて造る清酒。国立醸造試験所が国賓を迎える晩餐会向けに開発したとされ、濃醇な甘みととろみを持ち、熟成が進むと重厚な琥珀色に変わっていくという。
- 生酛Kimoto乳酸を人工的に添加せず、蔵や周囲の自然にすむ天然の乳酸菌を取り込んで酒母を育てる、清酒で最も古いとされる造り方。米をすり潰す「山卸し」という重労働を伴い、力強く複雑な酸味を持つ酒に仕上がるとされる。
- 生酒Namazake搾ったもろみに火入れという加熱処理を一切施さない清酒。酵素や酵母が生きたままの状態で瓶詰めされるため、搾りたてのフレッシュな香りが立つ一方、劣化が早く低温での保存と流通が必須とされ、開栓後も味が変わりやすく、購入後は早めに飲み切ることが望ましいとされる。
- にごり酒Nigorizakeもろみを目の粗い布でざっと漉し、米の滓をあえて残した清酒。どぶろくとは違い漉す工程を経るため酒税法上は清酒に分類され、発酵が生きたまま瓶詰めされたものは発泡を伴うことがあるとされる。
- 日本酒Nihonshu米・米麹・水を主な原料として醸す、日本の伝統的な醸造酒。精米歩合や酒母の造り方、火入れの有無といった技法によって多様な型に分かれ、水質や気候の違いが土地ごとの酒質を分けてきたとされる。
- 古酒(長期熟成酒)Koshu製造年度を越えて蔵で寝かせてから出荷する清酒。長期熟成酒研究会は満3年以上熟成させた糖類無添加の清酒をこう呼ぶとしており、熟成が進むほど色が濃くなり、香りも黒糖や蜂蜜を思わせる方向へ変わるとされる。
- 速醸Sokujo天然の乳酸菌任せにせず、あらかじめ醸造された乳酸を仕込み水に加えて酒母を育てる造り方。雑菌の繁殖を早い段階で抑えられるため、生酛や山廃に比べて短い期間で安定して酒母を仕込めるとされる。
- 樽酒Taruzake木製の樽に詰めて、木の香りを移した清酒。祝いの席で樽の蓋を割る「鏡開き」に使われる酒として知られ、杉の香りが酒質に移ることで、通常の清酒とは違う爽やかな風味になるとされる。
- 山廃Yamahai生酛から「山卸し」という米をすり潰す重労働だけを省いた酒母造り。天然の乳酸菌に頼る点は生酛と同じで、山卸しを省いても糖化が十分に進むと分かったことで生まれたとされる、力強い酸と旨みを持つ酒。