粉もの
粉もの
23種
「粉もの」は小麦粉を水やだしで溶いた生地を鉄板で焼く料理群で、大阪の混ぜ焼き、広島の重ね焼きのように「お好み焼き」と呼ばれる型を中心に、地域ごとに生地の配合・具材・焼き方が枝分かれしている。同じ生地でもタコを包んで丸く焼けばたこ焼きになり、だし汁につければ明石焼きになるというように、素材と焼き方の掛け合わせが土地の型を作る。戦後の食糧難や農村の粉食奨励、鉄工業の盛んな土地柄など、小麦粉が「米の代わり」として広まった事情も土地ごとに異なるとされる。ここでは生地と焼き方の型を、ご当地の粉ものに沿って辿る。
土地ごとの料理19
- 明石焼Akashiyaki兵庫県 明石市小麦粉とじん粉、卵とだし汁を混ぜた生地でタコを包んで焼き、だし汁につけて食べる明石市の郷土料理。見た目はたこ焼きに似るが、ソースではなくだし汁につける点が大きな違いとされる。
- 府中焼きFuchu-yaki広島県 府中市広島県府中市に伝わるお好み焼きの一種で、豚バラ肉の代わりに牛や豚のひき肉を生地に混ぜ込んで焼く。ひき肉が生地全体に広がるため、噛むたびに肉の旨みが感じられるとされる。
- 行田フライGyoda Furai埼玉県 行田市埼玉県行田市周辺に伝わる「フライ」は、揚げ物ではなく焼き物。水で溶いた小麦粉の生地にネギや豚肉をのせて鉄板で焼く、お好み焼きに似た軽食で、足袋工場で働く女工に広まったとされる。
- ぎゅうてんGyuten群馬県 桐生市群馬県桐生市の庶民食「ぎゅうてん」は、小麦粉を薄くといてキャベツやねぎと混ぜ、小判形に焼くお好み焼きに似た一皿。鉄板に生地をぎゅっと押しつけることが名の由来とされる。
- 広島お好み焼きHiroshima Okonomiyaki広島県 広島市薄く延ばした生地の上にキャベツ・豚肉・そばやうどんを山盛りに重ね、蒸し焼きにしてから卵の上に返す広島の重ね焼き。店が暮らしの中に密に根づいており、地元では〆の一品としても食べられている。
- いんおこIn-oko広島県 尾道市(因島)広島県尾道市因島の「いんおこ」は、うどんを主体にしたお好み焼き。造船とかんきつ栽培の島で、麺料理としても軽食としても食べられる、うどん入りが主流の型が定着したとされる。
- ふわふわ納豆焼Fuwafuwa Natto-yaki広島県 熊野町広島県熊野町の「ふわふわ納豆焼」は、お好み焼きの生地に納豆と卵、山芋を加えてふわりと焼き上げる。粘りの強い食材を重ねることで、他の広島焼きにはないやわらかな口当たりが生まれるとされる。
- 呉焼きKure-yaki広島県 呉市広島県呉市の名物で、広島お好み焼きに地元の細うどんを使い、生地を二つ折りにした半月形に仕上げる。造船所の職工が休憩時間に手早く食べられるようにという理由から生まれたとされる。
- 三原焼きMihara-yaki広島県 三原市広島県三原市のお好み焼きは、具に鶏モツを加える。養鶏が盛んだった土地柄から、麺やキャベツに加えてコリコリとした鶏の内臓が層に加わるとされ、噛むごとに違う食感が現れる。
- 三次唐麺焼Miyoshi Karamen-yaki広島県 三次市広島県三次市の「三次唐麺焼」は、唐辛子を練り込んだ麺を使う辛口のお好み焼き。内陸の盆地特有の寒暖差が育てた土地の食習慣が、麺そのものに辛さを仕込む型を生んだとされる。
- もんじゃ焼きMonjayaki東京都 中央区(月島)ゆるく水で溶いた小麦粉に具材を混ぜて鉄板で焼き、めいめいの小さなヘラで熱々をすくって食べる東京・月島の料理。子どもが鉄板に文字を書いて遊んだ「文字焼き」がなまって名がついたとされる。
- にくてんNikuten兵庫県 高砂市兵庫県高砂市で「にくてん」と呼ばれるお好み焼きの一種。すじ肉やこんにゃく、じゃがいも、天かすを甘辛く味付けして生地にのせ、半分に折りたたんで食べる、おでんの残りにも似た一皿とされる。
- 尾道焼きOnomichi-yaki広島県 尾道市広島県尾道市のお好み焼きで、砂肝とイカ天を具に加える。海運と造船で栄えた港町らしく、魚介の練り物と鶏の内臓という組み合わせが土地の食材事情を映しているとされる。
- おやきOyaki長野県 小川村そば粉や小麦粉の生地でなす・きのこ・野沢菜などの具を包み、鉄鍋で焼いてから蒸し焼きにする信州の郷土料理。米づくりに向かない山間地で、小麦やそばが「米の代わり」として広まった食文化とされる。
- 庄原焼きShobara-yaki広島県 庄原市広島県庄原市のお好み焼きで、麺の代わりに庄原産の米を使い、ソースの代わりにポン酢で食べる。稲作が盛んな内陸の土地柄が、海側の重ね焼きとは違う味付けを育てたとされる。
- 純米吟醸たけはら焼きJunmai Ginjo Takehara-yaki広島県 竹原市広島県竹原市の「純米吟醸たけはら焼き」は、生地に酒粕や日本酒を練り込んだお好み焼き。「安芸の小京都」と呼ばれる酒どころならではの発想で、生地そのものに地元の酒蔵の香りをまとわせているとされる。
- たこ焼きTakoyaki大阪府 大阪市だしや卵で溶いた小麦粉の生地をたこ焼き器の丸い穴に流し込み、ぶつ切りのタコを芯にして丸く焼く大阪の軽食。屋台の「ラジオ焼き」からタコを主役にする形へと変わっていったとされる。
- たらし焼きTarashi-yaki埼玉県 秩父市埼玉県秩父地域や加須市などで農作業の合間に食べられてきた「たらし焼き」。小麦粉を水や味噌で溶いた生地を鉄板にたらして焼く、うどんやまんじゅうより手軽な小昼飯とされる。
- うす焼きUsu-yaki岩手県 盛岡市岩手県盛岡市の八幡宮祭礼などで屋台に並ぶ「うす焼き」。水で溶いた小麦粉を薄く丸くのばし、ねぎや紅しょうが、桜えびをのせて焼き、仕上げに醤油を塗る、市内でも狭い範囲で親しまれてきた祭りの味とされる。
発祥の土地を特定しないもの4
- ふなやきFunayaki福岡県筑後地域に伝わる「ふなやき」は、小麦粉と水だけの生地を丸く薄く焼き、黒砂糖や高菜漬けを挟んで折りたたむおやつ・軽食。舟形に折りたたむ形が名の由来とされる。
- ヒラヤーチーHirayachi卵とだしで溶いた小麦粉の生地にニラなどを散らして焼く沖縄の家庭料理。「沖縄風お好み焼き」と呼ばれることもあり、台風で外出できないときの手近な一皿として親しまれてきたとされる。
- じりやきJiriyaki群馬県の農村部で親しまれてきた味噌風味のお好み焼き「じりやき」。かつては囲炉裏の灰の余熱でじっくり焼き上げ、焼くときの「じりじり」という音が名の由来とされる、農作業の合間の軽食。
- お好み焼きOkonomiyakiだしで溶いた小麦粉の生地にキャベツや豚肉を合わせ、鉄板で焼く料理。大阪では具材を生地に混ぜ、広島では重ねて蒸し焼きにするなど、焼き方そのものが土地ごとに分かれるとされる。
食べに行く前に
チェーンの味の元になった料理
全国チェーンの味は、特定の土地の料理がもとになっているとされます。チェーン名から元の料理を見られます。
築地銀だこは、大阪発祥のたこ焼きの食感と製法を独自に磨き上げ、全国・海外へ広めたとされる。
くくるのたこ焼きは、大阪ミナミ・道頓堀のたこ焼き文化を、創作メニューとともに全国・海外へ広めたものとされる。
わなかのたこ焼きは、大阪ミナミ・千日前で地元客に親しまれてきたたこ焼き文化を受け継いでいるとされる。
道とん堀のお好み焼きは、大阪・道頓堀の名を店名に掲げ、関西風お好み焼きの食べ方を全国に広めたものとされる。
千房のお好み焼きは、大阪・千日前で生まれた鉄板焼きの食文化を、国内外の店舗へ広げてきたとされる。
鶴橋風月のお好み焼きは、戦後の大阪・鶴橋で夫婦二人が始めた店の味を受け継いでいるとされる。
ぼてぢゅうのお好み焼きは、戦後の大阪・玉出で生まれ、マヨネーズをかける食べ方やモダン焼きを広めたとされる。
もへじのもんじゃ焼きは、月島で育まれたもんじゃ文化を、魚介の仲卸直営という形で受け継いでいるとされる。