粉もの ── 粉もの
広島お好み焼き
Hiroshima Okonomiyaki
薄く延ばした生地の上にキャベツ・豚肉・そばやうどんを山盛りに重ね、蒸し焼きにしてから卵の上に返す広島の重ね焼き。店が暮らしの中に密に根づいており、地元では〆の一品としても食べられている。
- 発祥: 広島県広島市
- 東京から西へ約680km
広島県広島市
系譜
何でできているか
薄く延ばした生地の上に、せん切りキャベツと豚肉、蒸した中華麺(そばやうどん)が層を成して重なる。仕上げに薄焼き卵をくぐらせて返すため、断面には生地・麺・キャベツ・卵がそれぞれの層として現れるという。ヘラで割ると、蒸れたキャベツの甘みと麺のこし、濃厚な甘口ソースの香りが層ごとに立ち上がる。
どう作るのか
だし汁で溶いた生地を鉄板に薄い円形に広げ、キャベツ・もやし・豚バラ肉を山のように重ね、そばやうどんを別に炒めておいたものをのせる。大きなヘラで一気にひっくり返し、卵を割り入れた上に重ねてもう一度返すことで、麺と卵が生地の下に収まる。仕上げにソース、青のり、紅しょうがを添えて「ヘラ」でそのまま食べるのが流儀とされる。
なぜこの形になったのか
発祥は戦前に食べられていた「一銭洋食」とされ、戦後の食糧難のなかで空腹をしのぐ一品として形を変えていったという。広島は鉄を扱う工場が多く鉄板が比較的手に入りやすかったことが、お好み焼き店の増加を後押ししたと考えられている。昭和30年代以降、住宅を改装した店が増え、麺や豚肉を加える工夫が重なって現在の重ね焼きが定着し、広島東洋カープの優勝を機に全国へ知られていったとされる。この変遷は今も続いているという。
食べに行く前に
同じ系統の料理
この土地の食材と料理
派生
- 府中焼き広島県府中市に伝わるお好み焼きの一種で、豚バラ肉の代わりに牛や豚のひき肉を生地に混ぜ込んで焼く。ひき肉が生地全体に広がるため、噛むたびに肉の旨みが感じられるとされる。
- 呉焼き広島県呉市の名物で、広島お好み焼きに地元の細うどんを使い、生地を二つ折りにした半月形に仕上げる。造船所の職工が休憩時間に手早く食べられるようにという理由から生まれたとされる。
- 庄原焼き広島県庄原市のお好み焼きで、麺の代わりに庄原産の米を使い、ソースの代わりにポン酢で食べる。稲作が盛んな内陸の土地柄が、海側の重ね焼きとは違う味付けを育てたとされる。
- 尾道焼き広島県尾道市のお好み焼きで、砂肝とイカ天を具に加える。海運と造船で栄えた港町らしく、魚介の練り物と鶏の内臓という組み合わせが土地の食材事情を映しているとされる。
- 純米吟醸たけはら焼き広島県竹原市の「純米吟醸たけはら焼き」は、生地に酒粕や日本酒を練り込んだお好み焼き。「安芸の小京都」と呼ばれる酒どころならではの発想で、生地そのものに地元の酒蔵の香りをまとわせているとされる。
- 三原焼き広島県三原市のお好み焼きは、具に鶏モツを加える。養鶏が盛んだった土地柄から、麺やキャベツに加えてコリコリとした鶏の内臓が層に加わるとされ、噛むごとに違う食感が現れる。
- 三次唐麺焼広島県三次市の「三次唐麺焼」は、唐辛子を練り込んだ麺を使う辛口のお好み焼き。内陸の盆地特有の寒暖差が育てた土地の食習慣が、麺そのものに辛さを仕込む型を生んだとされる。
- ふわふわ納豆焼広島県熊野町の「ふわふわ納豆焼」は、お好み焼きの生地に納豆と卵、山芋を加えてふわりと焼き上げる。粘りの強い食材を重ねることで、他の広島焼きにはないやわらかな口当たりが生まれるとされる。
- いんおこ広島県尾道市因島の「いんおこ」は、うどんを主体にしたお好み焼き。造船とかんきつ栽培の島で、麺料理としても軽食としても食べられる、うどん入りが主流の型が定着したとされる。
同じ広島県
- あなご飯かば焼きにしたあなごをそぎ切りにし、だしで炊いたご飯に敷き詰める宮島の一皿。速い潮流にもまれて脂がのる「瀬戸のあなご」を使い、明治34年に宮島口駅の駅弁として売られたのが始まりと伝わる。
- あずま酢でしめたママカリを、酢飯の代わりに味付けしたおからで握る沿岸部の寿司。米が貴重だった時代、手に入りやすいおからで代用したのが始まりとされ、祭りや正月に振る舞われてきた。
- 美酒鍋鶏肉や砂ずり、豚肉を塩こしょうと日本酒だけで仕立てた鍋。銘醸地・西条の杜氏が酒造りの合間に食べたまかない料理が始まりで、利き酒の邪魔をしない薄味が特徴と伝わる。
- 江波巻きご飯に広島菜漬けとかつおぶし、白ごまをあえ、焼きのりで巻いた江波地区ののり巻き。片手で漕ぎながら食べられるよう両端を閉じることもあり、のり漁師の船上食として広まったと伝わる。
- がんす魚のすり身をパン粉で揚げた広島・呉の練り物。昭和20年代、蒲鉾製造で出るすり身の余りを活用する方法として考案されたとされ、揚げかまぼこにフライ衣をまとう独特の組み合わせを持つ、地元で長く愛される味である。