惣菜
町中華
29種
町中華は、中国の料理をもとにしながら、日本の食堂で白飯に合うように形を変えていった料理群を指す。片栗粉でとろみをつけた甘酢や醤油だれ、酢の効いた冷たい麺など、本場には見当たらない味付けや盛り付けが数多く生まれたとされる。背景には、戦後の食糧難や引揚げ者・華僑の生業として食堂が広がった事情があるという。西洋料理を翻案した洋食と、たどった道筋はよく似ている。
土地ごとの料理7
- 中華そばChuka Soba東京都 台東区醤油だれに鶏や豚のだしを合わせたすっきりとしたスープに、細めの中華麺を合わせる型。1910年に浅草で創業した中国料理店が、東京の醤油ラーメンの草分けとされ、その屋号を継ぐように「中華そば」の名が今も使われているという。
- エビチリEbi Chiri東京都 港区殻をむいたえびを、豆板醤の辛さにケチャップの甘みを重ねたとろみあんで仕上げる料理。四川の「乾焼蝦仁」を、四川出身の料理人が日本人向けに辛さを和らげて考案したと伝わる。
- エビマヨEbi Mayo神奈川県 横浜市衣をつけて揚げたえびに、マヨネーズをベースにした甘いソースを絡める料理。広東料理の料理人が、アメリカで食べたマヨネーズがけのえび料理に納得がいかず、独自に作り直したのが始まりとされる。
- 回鍋肉Hoikoro東京都 港区豚肉とキャベツを甜麺醤ベースの甘辛いたれで炒め合わせる料理。本場四川ではにんにくの茎などの葉野菜を使うが、日本では手に入りやすいキャベツに置き換わり、独自の型として広まったとされる。
- 麻婆豆腐Mabo Dofu東京都 港区豆腐と挽き肉を、豆板醤や甜麺醤で辛みと甘みをつけたとろみあんで煮込む料理。本場四川の花椒の痺れる辛さを控え、牛肉を豚肉に置き換えるなど、四川出身の料理人が日本人向けに作り替えたと伝わる。
- 台湾まぜそばTaiwan Mazesoba愛知県 名古屋市台湾ラーメンの具「台湾ミンチ」を、スープではなく茹でた麺に直接からめて食べる汁なし麺。2008年に名古屋の一軒の店が、失敗作を廃棄する寸前にひらめいたことから生まれたと伝わる。
- タンメンTanmen神奈川県 横浜市強火で炒めたもやしやキャベツ、豚肉を鶏がらの塩味スープに落とし、中華麺と合わせる麺料理。中国語の「湯麺」はスープ麺全般を指す言葉だが、日本のタンメンはこの名で独自の一皿として定着したとされる。
発祥の土地を特定しないもの22
- 杏仁豆腐Annin-dofu杏の種の仁を使った中国の薬膳に由来するデザート。日本では牛乳とアーモンドエッセンスで作ることが多く、フルーツやゼリーをシロップに浮かべる香港式の形が中華料理店や学校給食で定着した。
- 棒棒鶏(バンバンジー)Bambanji蒸した鶏肉を細く裂き、すりごまを効かせたたれをかける冷たい料理。四川料理が下敷きで、日本では辛さを抑えた甘めのごまだれに、きゅうりなどの野菜を添える形が定着した。
- 炒飯Chahan卵と刻んだねぎ、豚肉やハムを白飯と一緒に強火でぱらりと炒め合わせる、中華食堂の定番。広東の炒飯を手本にしながらも、日本では具や味付けが独自に整理され、半人前の「半チャーハン」という食べ方まで定着したという。
- チャーシューChashu豚のばら肉やもも肉を醤油だれでじっくり煮込んだ具材。中国の叉焼はたれを塗って炙り焼きにするのが本来の型とされるが、日本のラーメン店では煮て作る「煮豚」の型が広く定着しているという。
- 青椒肉絲Chinjao Roosu細切りにした肉とピーマンを油通ししてから炒め合わせる料理。本場中国では豚肉が基本とされるが、日本では牛肉を使う店が多く、オイスターソースで仕上げる型が定着しているという。
- 中華スープ(町中華のサイドスープ)Chuka Supu炒飯やご飯ものについてくる、ねぎや青菜を浮かべた小さなスープ。ごはんに味噌汁という和食の伝統から生まれた町中華流のサービスだと考えられていて、ラーメンのスープを使う店と別に取る店がある。
- 五目あんかけ焼きそばGomoku Ankake Yakisoba揚げ焼きにしてかりっと仕上げた中華麺に、豚肉や野菜、海鮮を炒めたとろみあんをかける料理。広東麺と同じ餡を使いながら、麺を汁なしで香ばしく揚げる点で分かれた、日本の中華食堂発の一皿とされる。
- 八宝菜Happosai豚肉や白菜、うずらの卵など多くの具材を炒め合わせ、とろみをつけた餡に仕立てる料理。中国では「八」が実際に八種類の具材を指すが、日本では「五目」と同じく具材の数にこだわらない言葉として広まったとされる。
- 春巻きHarumaki豚肉やたけのこ、しいたけなどの具を薄い皮で巻き、油でかりっと揚げる点心。広東の春巻きが手本とされるが、日本では皮を薄く仕立てて具の水分を抑え、独自の食感に整えられているという。
- 冷やし中華Hiyashi Chuka茹でた中華麺を冷水で締め、錦糸卵やハム、きゅうりを彩りよく並べて酢の効いたたれをかける夏の麺。中国の冷たい和え麺「涼拌麺」がヒントとされるが、酢醤油だれで食べる形は日本で独自に育ったという。
- かに玉Kanitamaほぐした蟹の身を溶き卵と合わせ、ふんわりと焼き上げる料理。中国の「芙蓉蟹」は卵白だけを使う白い仕上げだが、日本のかに玉は全卵を使うため黄色く、この違いが天津飯を生む土台になったとされる。
- 広東麺Kanton Men炒めた豚肉や野菜をとろみのある餡に仕立て、ラーメンの麺の上にかける料理。名前に「広東」を冠しながら、実際の広東料理には対応する料理がなく、日本で生まれた中華料理の一つとされる。
- 麻婆茄子Mabo Nasu揚げ焼きにした茄子と挽き肉を、麻婆豆腐と同じ豆板醤や甜麺醤の合わせだれで煮る料理。本場四川の「魚香茄子」とは調味の系統が異なり、日本の合わせ調味料の普及とともに広まったとされる。
- もやしそばMoyashi-soba炒めたもやしと豚肉を、醤油のコクのある餡にして麺にのせた町中華の一杯。東京・谷中の「一寸亭」の看板メニューが知られ、鶏ガラと野菜、豚骨のスープに餡のとろみとごま油が重なる。
- 肉団子の甘酢あんNikudango no Amazuan丸めた挽き肉を揚げ、酢豚と同じ甘酢あんをからめる料理。中国の獅子頭のような大ぶりの蒸し団子とは違い、日本では一口大に揚げてケチャップ系のあんで仕上げる、弁当や給食向けの型が広まったとされる。
- ニラレバ炒めNira Reba Itame豚や牛のレバーをにんにくやしょうがで下味をつけ、にらともやしと強火で炒め合わせる定食の定番。中国の家庭料理がもとにあるとされ、日本では醤油とオイスターソースで濃いめに仕立てる。
- 酢豚Subuta揚げた豚肉に、片栗粉でとろみをつけたケチャップ入りの甘酢あんを絡める中華食堂の定番。広東の古老肉が手本とされるが、パイナップルを入れるかどうかで意見が分かれる、日本ならではの論争を抱えている。
- 担々麺Tantanmenごまだれと辣油を効かせた挽き肉入りのスープに中華麺を合わせる料理。本場四川の担担面は汁のない和え麺だが、日本では大ぶりの丼にたっぷりのスープを張る、汁あり仕立てに作り替えられたとされる。
- 天津飯Tenshinhan卵でとじたかに玉を白飯にのせ、酸味と甘みのある醤油あんをかけた丼。中国には対応する料理がなく、日本で生まれたとされる。発祥は東京・浅草説と大阪説が並び立ち、決着していない。
- ワンタン麺Wantan-men薄い皮で豚のひき肉などを包んだワンタンを、醤油や塩のあっさりしたラーメンのスープに浮かべた一杯。日本では肉の多い餡が中心で、香港のエビが主体のワンタンメンとは姿が違う。
- 油淋鶏(ユーリンチー)Yurinchi唐揚げや竜田揚げにしたもも肉に、刻んだ長ねぎと甘い酢醤油のたれをかけた料理。中国では丸鶏に油をかけて揚げる調理を指し、日本の形とは大きく異なる。中国でもほとんど見られない点が研究で指摘されている。
- ジャージャー麺(炸醤麺)Jaajaamen豚のひき肉などを味噌で炒めた肉味噌を麺にのせる料理。北京の炸醤麺は素朴な家庭の味とされるが、日本の中華料理店では甘辛く、あんかけにした形が全国で共通している。盛岡のじゃじゃ麺とは別の系統と考えられる。
食べに行く前に
チェーンの味の元になった料理
全国チェーンの味は、特定の土地の料理がもとになっているとされます。チェーン名から元の料理を見られます。
大阪王将の羽根つき餃子は、大阪の町中華で親しまれてきた餃子と定食の組み合わせを全国に広めたものとされる。
バーミヤンの定食・単品中華は、町の中華料理店の定番メニューをファミリーレストランの形式で全国に広めたものとされる。
れんげ食堂Toshuの前身「中華東秀」は、世田谷の町中華食堂として親しまれてきた味を受け継いでいるとされる。
ぎょうざの満洲の餃子は、埼玉県所沢で生まれた中華料理店の味を、全店直営のまま関東・関西に広げたものとされる。
紅虎餃子房は、町中華で親しまれてきた庶民的な中国料理を、気取らず食べられる形で提供することを掲げて生まれたとされる。
味仙愛知県の地域限定
味仙で考案されたと伝わる台湾ラーメンは、名古屋の町中華・中国料理店に広がった激辛アレンジ麺の系統を生んだとされる。
宇都宮みんみん栃木県の地域限定
宇都宮みんみんの餃子は、宇都宮が「餃子の街」として知られるようになる上で大きな役割を果たしたとされる。
五味八珍の餃子は、浜松で育まれた「浜松餃子」の味を、静岡・愛知・山梨・神奈川の中華レストランへ広げたものとされる。