ごはんもの
寿司ネタ
27種
寿司ネタは、握りや軍艦に「何をのせるか」という素材の図鑑にあたる。マグロなら赤身・中トロ・大トロと部位で分かれ、鯖はシメサバという酢締めの仕事を経て、アナゴは煮てツメを塗る。同じ魚介でも、寿司の上でどう切り、どう仕込むかで別のネタとして扱われるとされる。ここでは魚そのものではなく、寿司の上での仕事・切り方・位置づけを辿る。
発祥の土地を特定しないもの27
- 赤貝Akagai血液に鉄を含む色素を持つため身が赤いことからその名がついた貝。コリコリとした食感で高級寿司ネタとされ、市販品にはサルボウガイが代用されることも多いという。鮮度が仕事の質を大きく左右する貝とされる。
- 赤身のヅケAkami no Zukeマグロの赤身を醤油だれに浸けて締めたもの。冷蔵の手立てがなかった時代に身を持たせる工夫として生まれ、大トロが好まれる今もヅケ専用の仕込みとして受け継がれているという。江戸前寿司の原点にあたる仕事の一つとされる。
- 甘海老Ama-ebiホッコクアカエビの通称。生きているうちは甘みを感じにくく、水揚げ後にアミノ酸が増えて甘くなるとされる。頭は捨てずに素揚げにされることも多く、身とは別の濃い旨みを持つという。
- アナゴAnago煮て柔らかく仕立て、煮汁を炊いたツメを塗って出す。江戸前の煮物仕事の代表。
- ボタン海老Botan-ebi甘海老よりも大ぶりで漁獲量が少なく、とろけるような甘みを持つ海老。高価で料亭や高級寿司店以外ではあまり見かけられないとされる。近縁の複数種がまとめてこの名で流通しているという。
- 中トロChutoroマグロの腹身のうち、大トロほど脂が強くない部位。脂と赤身の味がほぼ半々で拮抗するため、脂の重さと赤身の香りを同時に味わえる部位とされる。大トロと赤身の両方の良さを求める客に選ばれてきたという。
- エンガワEngawaヒラメやカレイの背びれ・尻びれの付け根にある、ひれを動かす筋肉。脂が乗ってコリコリとした食感を持ち、一尾から少量しか取れない部位とされる。かつては高級ネタの代表格だったという。
- ヒラメの昆布締めHirame no Kobujimeヒラメの身を昆布で挟んで寝かせたもの。水分が昆布に吸われて身が締まり、昆布のグルタミン酸が移ることで、刺身とは違う深い味わいになるとされる。冬が旬の「寒ビラメ」に向く仕事という。
- ホタテHotateホタテガイの貝柱をそぎ切りにして握りにしたもの。肉厚で淡白ながらほぐれやすく、グリコーゲンに由来する甘みが特徴とされる。生食用と加熱用が区別して流通する地域もあるという。
- イカの鹿の子造りIka no Kanoko-zukuriスミイカやアオリイカなどの身に格子状の切れ目を入れる仕事。皮に近い部分に旨みがあるが厚くて噛み切りにくい身を、食べやすくしつつ甘みを引き出すための技とされる。見た目にも美しい飾り包丁の一つという。
- イクラ軍艦Ikura Gunkanサケの卵をひと粒ずつばらしたもの。筋子との違いは薄皮を残しているかどうかとされ、軍艦巻きの形で酢飯の上に盛られる。噛むとプチプチと弾ける食感が最大の持ち味だとされ、色つやも鮮度の目安になるという。
- かんぴょうKanpyoユウガオの果肉を紐状に剥いて干した保存食を、煮て巻き寿司の具にしたもの。魚を使わない巻物として、握りのネタとは違う立ち位置を持つとされる。栃木県が国内生産のほとんどを占めるという。
- 数の子Kazunokoニシンの卵を塩蔵または乾燥させたもの。プチプチとした歯ざわりが持ち味で、子孫繁栄を祝う縁起物として正月のおせちにも欠かせないとされる。漂白で黄金色に仕上げられ「黄色いダイヤ」とも呼ばれるという。
- キス(皮霜仕立て)Kisu (Kawashimo-jitate)皮目に軽く熱を通し、冷水で締めてから開いたキス。淡白な白身に、皮のわずかな旨みと歯ざわりを添えるための仕事とされる。将軍にも献上された江戸の白身の代表格で、小骨の多さも扱いの難しさに数えられるという。
- コハダKohada塩と酢で締めて仕事をする、江戸前の代表格。安い小魚を技で食わせる。
- 車海老(茹で)Kuruma-ebi (Yude)活きた車海老を串に沿わせてまっすぐ茹で、殻をむいて握りに仕立てたもの。曲がった尾まで美しい姿を保つための下処理が仕事の中心になるという。活け車海老のまま流通する数少ない海老の一つとされる。
- マグロMaguro今日の寿司の主役。江戸前では漬けにして使われた。大間・那智勝浦・三崎・焼津が水揚げで名高い。
- ミル貝Mirugai貝殻に収まりきらないほど発達した水管を食用にする貝。国産は減少して久しく、今では高級食材の一つとされ、代用として白みると呼ばれる近縁種が多く流通しているという。皮をむく手間が仕事の中心とされる。
- ネギトロ(軍艦)Negitoroトロの部位を骨についた身ごと叩き刻んだもの。軍艦巻きの定番ネタの一つとされ、切り身では出せない脂と粘りの一体感を楽しむネタだという。骨を無駄にしない工夫から生まれたと伝わる。
- 煮蛤Ni-hamaguriハマグリを甘辛い煮汁で煮て、煮詰めたツメを塗って仕立てたもの。生のまま握るのではなく、火を通して味を含ませる江戸前の煮物仕事の一つとされる。俳句では春の季語とされるほど季節感の強い貝で、婚礼や祝いの席にも用いられるという。
- 大トロOtoroマグロの腹身のうち、もっとも脂肪が多い部位。かつては足が早く傷みやすいため「猫またぎ」とまで呼ばれたが、冷凍技術の進歩と食生活の変化で今日もっとも珍重される部位になったとされる。切り付けにも独特の配慮がいるという。
- サヨリSayori背は青緑、腹は銀色に輝く細身の魚。腹の中の膜が真っ黒なのが特徴で、下処理でこれを丁寧にこすり落とすかどうかが仕事の分かれ目になるという。旬は春とされ、江戸前の季節を告げるネタの一つとして扱われてきたと伝わる。
- シメサバShime-saba三枚におろした鯖を塩でしめ、酢に浸けて仕立てたもの。生食に不向きとされる鯖を安全に、かつ身を締めて食べさせるための仕事とされる。江戸前の光り物を代表する一品として扱われてきたという。
- 白子Shirako魚の精巣を食材としたもの。タラ、フグ、アンコウなどから取れ、とろりとした独特の食感が持ち味とされる。寿司では軍艦巻きとして供されることが多いという。冬場にしか出回らない季節限定のネタとされる。
- タコの桜煮Tako no Sakura-ni茹でダコをさらに甘辛いたれで煮て、淡い桜色に仕立てたもの。日本ではタコの刺身は生食よりも茹でて用いるのが一般的とされ、そこからさらに手を加えた仕事の一つとされる。吸盤の並びが断面にそのまま残るのも特徴で、コリコリとした歯ごたえも持ち味という。
- 玉子(厚焼き・だし巻き)Tamago白身魚や海老のすり身を加えて甘く焼き上げた玉子焼き、あるいは出汁で仕立てただし巻き玉子を切り分けたもの。江戸前寿司では職人の技量を測るネタとされてきたという。コースの最後に選ばれることが多いとされる。
- ウニ軍艦Uni Gunkanウニの生殖巣を酢飯の上にのせ、海苔で囲んで固定したもの。形を保てない素材を軍艦巻きという器に盛る、寿司ならではの解決策とされる。ミョウバン処理の有無が味と品質を左右するという。