ごはんもの ── 寿司ネタ
赤身のヅケ
Akami no Zuke
マグロの赤身を醤油だれに浸けて締めたもの。冷蔵の手立てがなかった時代に身を持たせる工夫として生まれ、大トロが好まれる今もヅケ専用の仕込みとして受け継がれているという。江戸前寿司の原点にあたる仕事の一つとされる。
系譜
赤身のヅケマグロ
何でできているか
マグロの背側に多い、脂の少ない赤身が主役。醤油だれに浸けると表面がわずかに締まり、生の赤身とは違う照りと、ねっとりとした舌触りが出る。脂の甘さで食べさせる中トロや大トロとは逆に、鉄分を感じるような赤身そのものの味が前に出る仕立てだという。江戸前ではこの赤身こそがマグロの基本形として扱われてきたと伝わり、づけにすることで刺身とはまた違う濃い旨みが立つとされる。
どう作るのか
柵にした赤身を醤油だれに数十分から一晩ほど浸け、余分な水分とともに生臭さを抜く。かつては酒や昆布を加えただれにじっくり漬け込み、何日か身を持たせる仕込みとして扱われたとされる。今日では冷蔵技術が整い、短時間で味をのせるだけの店も多いが、づけならではの照りと締まりは今も変わらないという。漬け込む時間の長さで味の濃淡を調整するのが職人の勘所とされる。
なぜこの形になったのか
江戸時代中期に醤油が広まると、冷蔵の手立てがない中で魚を持たせる工夫として、マグロの赤身を醤油に漬け込む方法が生まれたと伝わる。当時は「赤べろべろ」とも呼ばれ、下魚として扱われたマグロを美味しく食べさせるための知恵だったとされる。握り寿司にマグロが使われ始めたのは天保年間(1830年代)ごろとされ、この仕事から今日の多彩な部位使いが広がったという。