ごはんもの ── 寿司ネタ
コハダ
Kohada
塩と酢で締めて仕事をする、江戸前の代表格。安い小魚を技で食わせる。
何でできているか
出世魚で、成長段階によってシンコ・コハダ・ナカズミ・コノシロと呼び名が変わる。塩と酢で締めた身は青い皮に銀色の光沢を帯び、江戸前で「光り物」と呼ばれる一群の代表格として扱われる。噛むと酢の酸味がまず立ち、そのあとに小骨の歯ごたえと脂の甘みが遅れて追いかけてくる、小魚らしい俊敏な後味が身上で、最も小さいシンコは夏の一時期だけ出回る珍重品でもある。
どう作るのか
塩を振って余分な水気を抜き、洗い流してから酢に漬けて締める。魚の大きさや脂の乗り具合で塩と酢の当て方をそのつど変え、店によっては数時間で仕上げるところもあれば、一週間近くかけてじっくり熟成させるところもある。仕入れ値の安い小魚だからこそ、塩加減と酢の浸し方という手の仕事だけで味の差がはっきりつき、隠しようがない。
なぜこの形になったのか
一説によると、冷蔵技術のなかった時代、傷みやすい光り物を生のまま出すことができず、塩と酢で締める工夫が江戸前寿司の仕事として定着したとされる。マグロのように素材の力だけで押し切れない魚だからこそ、締め方の巧拙がそのまま店の評判を左右してきたと読める。安い魚ほど仕事の差が味に出るという、江戸前寿司の技を測る物差しとして今も語り継がれている。