肉 ── 和牛
但馬牛
Tajima Ushi
神戸ビーフをはじめ多くの銘柄の素となる系統。谷ごとに血統が守られてきた。
- 発祥: 兵庫県
- 東京から西へ約450km
系譜
何でできているか
兵庫県北部の山あいで育つ黒毛和種で、全国に散らばる銘柄牛の血統を遡ると、多くがこの系統に行き着くとされる基礎的な存在。筋繊維が細かく、赤身の中にきめ細かなサシがすっと入りやすい体質を持つ。単体で「但馬牛」として流通することは少なく、松阪や神戸など各地の銘柄として育て直されたうえで食卓に上ることが多い。
どう作るのか
兵庫県美方郡香美町小代地区では、江戸期に前田周助という人物が優れた牛を選んで育てる体系を確立し、昭和14年にはその系譜から種雄牛「田尻号」が生まれたとされる。険しい山と谷に囲まれ、峠を越えての交配が難しかったこの土地では、谷ごとに血統が守られ、小規模な繁殖農家が一頭ずつ手をかけて育ててきたという。稲作の合間に牛を飼う農家も多く、暮らしと分かちがたく結びついてきた。
なぜこの形になったのか
一説によると、道の少ない険しい地形が谷ごとの近い血縁での交配を続けさせ、結果として肉質に優れる系統が土地ごとに純化していったとされる。全国の黒毛和牛の大半が田尻号の血を引くとも言われ、閉ざされた地形が生んだこの血統の純度が、のちに各地の銘柄牛が受け継ぐ土台になったと読める。一頭の牛の血が、遠く離れた土地の肉質を左右してきたことになる。
食べに行く前に
同じ系統の料理
この土地の食材と料理
派生
- 能登牛石川県・能登半島で育つ黒毛和種。明治25年に兵庫県但馬地方から導入した種雄牛3頭がルーツとされ、脂肪にオレイン酸を多く含む上品な口溶けが特徴だという。全国有数のオレイン酸含有量を持つとも言われる。
- 神戸ビーフ但馬牛のうち、霜降りなどの厳格な基準を満たした肉だけが名乗れる称号。
- 前沢牛北上川沿いの前沢で育つ、東北を代表する霜降りの銘柄。
- 淡路ビーフ淡路島で育つ純血の但馬牛系統。1986年に生産者らが立ち上げた銘柄で、霜降りの量よりも赤身と脂の調和を重視して選ばれる、出荷頭数の少ない牛肉とされる。淡路牛と呼ばれる一般呼称とは区別される、希少な銘柄という。
- 宮崎牛全国和牛能力共進会で最高賞を重ねてきた、県を挙げて育てる銘柄。
- 飛騨牛一頭の名種雄牛「安福号」の系統が礎を築いた。飛騨の山あいで育つ。
- 仙台牛肉質等級が最高の「5」でなければ名乗れない、基準の最も厳しい銘柄のひとつ。
同じ兵庫県
- 明石焼小麦粉とじん粉、卵とだし汁を混ぜた生地でタコを包んで焼き、だし汁につけて食べる明石市の郷土料理。見た目はたこ焼きに似るが、ソースではなくだし汁につける点が大きな違いとされる。
- 赤穂の塩江戸時代に完成した入浜式塩田による、専業製塩の先駆けとされる塩。水尾と防潮堤で海水を制御し干満に左右されず作業できる画期的な仕組みで、300年にわたり日本の主要な製塩法であり続けたとされる。
- 播州ラーメンはっきり甘い醤油スープ。織物工場で働く女性たちに好まれて定着したと伝わる。
- 播州手延べそうめん太子町の斑鳩寺に伝わる文書には応永25年(1418年)の条に「サウメン」の記述があり、兵庫県内で最も古いそうめんの記録とされる。江戸時代の安永年間には龍野藩の許可業種として奨励され、播州平野の小麦・揖保川の水・赤穂の塩が産地としての土台になった。
- ぼたん鍋白と赤の合わせみそでとっただしに、猪肉と季節の野菜をたっぷり入れて煮る丹波篠山の鍋。粉山椒を効かせて食べることが多く、切り分けた猪肉を牡丹の花びらのように盛り付ける店もあるという。