麺 ── そば
わんこそば
Wanko Soba
岩手県花巻市に伝わる、一口大のそばを次々におかわりする食べ方。藩主にそばを椀で少しずつ振る舞ったのが由来とされる。
- 発祥: 岩手県花巻市
- 東京から北へ約430km
岩手県花巻市
系譜
わんこそば盛岡冷麺
何でできているか
一口分だけを椀に盛った、ごく小さな盛りのそば。薬味は客の好みで加えられ、少量ずつ次々に給仕されるので、生地自体は普通の盛りそばと変わらなくても、出し方だけで別の食べ物のように感じられる。おかわりを重ねるうちに薬味の組み合わせも変わっていき、一椀ごとの量は控えめでも、重なるおかわりが満足感を積み上げていく。小さな一口が積み重なっていく感覚こそがこの食べ方の核にある。
どう作るのか
給仕役が「はい、じゃんじゃん」などと声をかけながら、客の椀が空くたびに一口分のそばを次々に注ぎ足していく。客が椀にふたをするまでおかわりは続き、食べた杯数がそのまま食べた量として数えられる。何杯食べたかを競う遊び心も、もてなしの延長として親しまれており、周りで見ている人も一緒になって杯数を数えて盛り上がる。客とのやり取りそのものが、この食べ方の一部になっている。
なぜこの形になったのか
一説によると、南部藩主が江戸への道中で花巻に立ち寄った際、もてなしとしてそばを差し上げたところ何度もおかわりを所望したため、椀に少しずつ盛って差し上げたのが始まりという。もてなす側の給仕そのものが主役になる、もてなし料理としての性格を色濃く残しており、その杯数を数える習慣が今も観光客の間で語り継がれている。一杯ずつの積み重ねに、もてなす側ともてなされる側の関係が見える。
食べに行く前に
同じ系統の料理
この土地の食材と料理
対比
同じ岩手県
- 小豆ばっとう小麦粉を寝かせて幅広のうどん状に切り、ざらめで甘く煮た小豆汁に合わせる。建前や庭じまいの祝いに三陸沿岸地域で作られ、お盆の七日目に7回食べると無病息災とする風習も残る。
- へっちょこだんごたかきび粉やもちあわ粉など雑穀の団子の中央をへこませ、甘い小豆汁で煮る。「うきうきだんご」とも呼ばれ、収穫後の労をねぎらう「庭じまい」の行事食として、米が育ちにくい県北で作られてきた。
- ひなまんじゅう米粉の生地に食紅で色をつけ小豆あんを包み、木型や竹串で花や桃、うさぎなど30種以上の形に整える。花巻市大迫町のひな人形めぐりの風習とともに伝わり、桃の節句に「きりせんしょ」と共に供えられる。
- 氷頭なます鮭の頭の軟骨部分「氷頭」を薄くスライスし、塩をして酢でしめてから大根とにんじんのなますと和える。一尾からわずかしか取れない珍味とされ、宮古湾に鮭が遡上する三陸沿岸で正月料理として伝わる。
- 伝統餅料理あんこやずんだ、くるみ、納豆、雑煮など約300通りの食べ方がある餅料理の総称。仙台藩の命で月2回餅を搗いた風習が根付き、一関では年60回以上餅を食べる「餅暦」と、儀礼作法に則る「餅本膳」が今も残る。
- いもの子汁秋に旬を迎えるさといもを鶏肉や豆腐、大根、にんじんとともに醤油味で煮込む。さといも栽培に適した北上川流域の秋の味覚で、川岸に集まって鍋を囲む「芋煮会」が今も北上市二子地区で受け継がれている。