麺 ── そば
馬肉蕎麦
Baniku Soba
熊本県阿蘇地域に伝わる、馬肉の甘辛いしぐれ煮を温かいそばにのせる料理という。馬肉文化が根づいた土地で、けが人や病人への薬膳料理として食べられてきた歴史を持つとされる。
- 発祥: 熊本県阿蘇市
- 東京から西へ約860km
熊本県阿蘇市
何でできているか
主材料は馬肉の小間切れとそばである。馬肉をしょうがと醤油・砂糖・酒・赤酒でじっくり甘辛く煮詰めた「しぐれ煮」を作り、これを熱いそばにのせる。馬肉は「桜肉」とも呼ばれ、熊本ではスーパーでも普通に並ぶ身近な食材だという。ほろりとほどける肉の食感が持ち味とされ、そばの香りと肉の甘辛さが絡み合う味わいだといわれる。
どう作るのか
馬肉を下ゆでしてから、しょうがと調味料でじっくり甘辛くなるまで煮詰め、しぐれ煮に仕立てる。茹でて温めたそばを丼に盛り、しぐれ煮をのせて仕上げる。「熊本で肉そば」といえば、この馬肉のしぐれ煮を指したとされ、薬味に刻みねぎを添えることも多いという。甘辛いたれがそばつゆにも自然に溶け込んでいく、滋味深い味わいである。
なぜこの形になったのか
肥後藩主・加藤清正が朝鮮出兵の際に軍馬を食べたことが馬肉文化の始まりと伝わる。江戸時代には栄養価の高い薬膳料理として、けが人や病人に供されたという。戦後は阿蘇山麓で役目を終えた軍馬の肉が活用され、馬肉料理が広まったとされる。武士の時代から戦後まで長く続いてきた土地の歴史が、この一杯の皿の上に重なり合い、今も変わらず熊本の食文化をなお静かに、確かに象徴し続けているのだと言われる。
食べに行く前に
同じ系統の料理
この土地の食材と料理
対比
同じ熊本県
- 天草大王明治・大正期に天草で飼われた大型の肉用鶏が昭和初期に途絶えたのち、熊本県が約10年かけて復元したとされる。120〜150日齢で出荷され、日本最大級の地鶏という。
- がね揚げ拍子切りにしたさつまいもをしょうが入りの甘めの衣にくぐらせ、油で揚げた惣菜。天草の方言で「がね」はカニの意味で、揚げた形がカニの足に似ることから名付けられたという。精進料理としても使われる。
- 鯛そうめんタイの頭や中骨を煮た「あら炊き」の煮汁でそうめんを煮て食べる祝い料理。そうめんを使うのは特産地・島原の食文化の影響とされる。山都町馬見原では鯛を丸ごと姿煮にする「鯛めん」として伝わるという。
- たこ飯天日干しにした「干しダコ」を水でもどして刻み、ごぼうや人参と炊き込む、または後から混ぜるご飯。旨味が凝縮した干しダコを使うことが多く、天草市有明町の夏の風物詩とされる干しダコ干しの光景で知られる。
- ぶたあえ茹でタコとなすを甘辛い麦味噌で炒め合わせた天草の家庭料理。かつて手に入りにくかった豚肉の代わりに、地元で獲れるマダコを使ったのが始まりとされ、名前だけ「豚和え」として残ったという。
- だご汁小麦粉の生地を手で延ばしちぎった団子を、里芋やごぼうなど季節の野菜と味噌や醤油で煮込んだ汁もの。「だご」は熊本弁でだんごの意味で、農作業の合間の食事として親しまれてきたという。