麺 ── そば
富倉そば
Tomikura Soba
長野県飯山市富倉地区に伝わるそば。つなぎに小麦粉ではなく、山野草オヤマボクチの葉から取った繊維を使う、他に類を見ない製法で作られる。
- 発祥: 長野県飯山市富倉
- 東京から北西へ約190km
長野県飯山市富倉
何でできているか
つなぎに小麦粉を使わず、山野草オヤマボクチの葉から取り出した繊維を使う。海藻ではなく陸の草の繊維でそばをつなぐという、他ではあまり見ない材料選びが名前の由来にもなっている。麺は黒っぽく粘りが強く、コシがしっかりしているのが特徴とされ、他の郷土そばと比べても際立って手間のかかる製法として知られている。作り手のあいだでは今も「幻のそば」と呼ばれることがある。
どう作るのか
オヤマボクチの葉を揉んで叩き、煮てから水洗いして硬い葉脈を取り除く作業を四、五回も繰り返し、ようやく繊維を取り出す。葉一キロからわずか四、五グラムしか繊維が採れないといい、この下ごしらえの手間がつなぎ一つを支えている。手間のわりに繊維の量が少ないことが、この製法の希少性を高めている一因でもあり、打ち手の減少にもつながっている。この工程を知ってから食べると、一口の重みが変わってくる。
なぜこの形になったのか
富倉は積雪が三メートルを超えることもある豪雪地帯で、小麦の栽培には向かない土地だったとされる。つなぎに使える小麦を持たない代わりに、山に自生する草の葉から繊維を取り出す手間のかかる方法が、この土地なりの答えとして受け継がれてきたと伝わる。受け継ぐ担い手が減る中でも、地元では味と製法を守ろうという取り組みが続けられている。
食べに行く前に
同じ系統の料理
この土地の食材と料理
対比
同じ長野県
- 安養寺ラーメン信州味噌のルーツとされる安養寺味噌を主役に据えた、佐久の味噌ラーメン。
- 具だくさん味噌汁大根や人参、ごぼうなど旬の根菜をたっぷり入れて煮る長野の日常の汁物。具だくさんにすることで味噌の使用量を抑えられるとされ、小麦粉の生地を落とす「すいとん」を加えて主食代わりにすることもあるという。
- 半ごろしすりこぎで半つぶしにした「半ごろし」のもち米に、あんやきなこをまぶす東信地域のぼたもち・おはぎ。春は「ぼたもち」、秋は「おはぎ」と呼び分けるが同じもので、農作業の合間の手間のかからない祝い菓子という。
- ひたし豆青大豆を歯ごたえが残る程度にゆで、薄味のだし汁に浸す北信・東信地域の一品。馬の鞍のような模様をもつ「鞍掛豆」でもつくられ、数の子と合わせておせち料理にもなるという。
- 干しかぼちゃのえごま和え短冊切りにしたかぼちゃをからからになるまで天日に干し、水で戻してすったえごまで和える鬼無里地域の保存食。冬に腐りやすいかぼちゃを保存用に干す知恵から生まれ、煮物やおやきの具にも使われるという。
- ほう葉巻き熱湯でこねた米粉の生地であんを包み、朴の葉に包んで蒸す木曽地域の祝い餅。柏の木がない山あいでは代わりに朴の葉を使うようになったと伝わり、翌日の方が葉の香りが移って美味しいという。