麺 ── そば
へぎそば
Hegi Soba
新潟県小千谷市で、織物の糸を糊付けする海藻「布海苔」をつなぎに使い始めたそば。「へぎ」と呼ばれる木箱に一口ずつ盛り付ける。
- 発祥: 新潟県小千谷市
- 東京から北西へ約200km
新潟県小千谷市
何でできているか
つなぎに小麦粉ではなく「布海苔」という海藻を使う。もともとは小千谷縮という織物の糸を糊付けするために使われていた材料で、これをそば粉に練り込むと、つるりとしたのどごしと歯切れのよい強いコシが同時に出る。見た目もほのかに青みを帯びた白さになり、香りも心なしか磯の気配をまとう。つなぎに海藻を使う分、時間が経っても伸びにくいという性質も備えている。
どう作るのか
茹で上げたそばを水から引き上げるとき、一口分だけを手のひらでつまみ、手を振るようにひと巻きしてから木箱の「へぎ」に並べていく。この盛り付けは「手振り」と呼ばれ、一枚のへぎに一口大の束が波打つように何列も並ぶ独特の景色を作る。束一つひとつの大きさをそろえる手さばきも職人の見せどころで、一枚のへぎがそのまま盛り付けの作品にもなる。
なぜこの形になったのか
布海苔は本来そばのためではなく、小千谷縮の糸を糊付けするために使われていた織物の町の材料だったと伝わる。織物産業ですでに扱い慣れていた材料をそばのつなぎに転用したという成り立ちが、他所にはない食感と盛り付けの両方を生んだと考えられる。糸から麺へと材料の使い道が移った、小千谷という土地の産業史そのものが織り込まれた一杯といえる。
食べに行く前に
同じ系統の料理
この土地の食材と料理
対比
同じ新潟県
- あんぼ米粉の生地であん餅や漬け菜、なすなどの具を包んで蒸す中越地域の郷土料理。小麦が育ちにくく米どころだった土地柄から、長野の「おやき」に似ながらも皮に米粉を使うのが特徴とされる。
- 越後味噌精白した丸米を使うため麹粒が味噌の中に浮いて見えることから「浮麹味噌」とも呼ばれる、新潟県の赤色辛口味噌。上越・中越・下越・佐渡それぞれで気候風土に応じた作り方の違いがあるとされる。
- ふぐの子の粕漬けゴマフグの卵巣を2年以上塩蔵したのち佐渡の酒粕で長期熟成させる珍味。ふぐ調理師免許を持つ者が処理したものだけが出回り、江戸時代から佐渡でつくられてきたと伝わる。
- ふかしなす巾着なすを半分に切って蒸し、冷やしてからし醤油や生姜醤油で食べる新潟の郷土料理。なすの生産量が全国有数の新潟で、体を冷やす夏の一品として親しまれてきたと伝わる。
- 冷やし汁みそ仕立てだし汁を味噌でのばし、きゅうりや青じそを刻んで加える中越地方の冷たい汁物。夏に食欲が落ちても食べやすいよう工夫された料理で、そのままでもごはんや麺にかけても食べられると伝わる。