ごはんもの ── 寿司
さんまずし
Sanma-zushi
三重県熊野市に伝わる、サンマを背開きにして柑橘酢でしめる棒状の押し寿司。産田神社の子どもの成長を願う神事に由来するとされ、紀伊半島の海沿いの家々で広く作られてきた。
- 発祥: 三重県熊野市
- 東京から南西へ約390km
三重県熊野市
系譜
さんまずし
何でできているか
背開きにしたサンマを塩でしめ、だいだいやレモンなど柑橘の酢に浸してから酢飯に重ね、巻きすで棒状に締める。二センチ幅に切り分けると、銀色に光るサンマの皮と、酢でほんのり色づいた身が並ぶ。脂の乗ったサンマと柑橘の酸味が、他地域のサバのなれずしより軽やかな後味を残す。山椒の葉やごまを添えることもあり、酢飯の甘みとサンマの脂が香りの中でひとつにまとまる。
どう作るのか
サンマは背開きまたは腹開きにして中骨と内臓を取り、塩をあてたのち水洗いする。下漬けとして二十分ほど軽く酢に通し、さらに本漬けの柑橘酢にしっかり漬け込む。酢飯にのせて巻きすで形を整え、二センチ幅に切り分けて仕上げる。下漬けと本漬けを分けるのは、酢の入り方を段階的に調整し、身の芯まで均一に味を通すためだという。
なぜこの形になったのか
熊野市の産田神社に伝わる、子どもの健やかな成長を願う神事「奉飯」が起源の一つとされる。十一月下旬、三重県沖を南下するサンマは産卵を控えて脂が落ち、身が締まって酢締めに向く時季を迎える。熊野の武家の食文化の影響で、腹開きではなく背開きが選ばれたとも伝わっている。紀伊半島の海沿いでは家庭ごとに配合する柑橘酢の割合が異なり、酸味の強さに土地ごとの個性が表れるとも言われる。
食べに行く前に
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この土地の食材と料理
対比
同じ三重県
- あほだき味や匂いが落ちてきた古漬けのたくあんを塩抜きし、醤油だれで炊き直す北勢地域の常備菜。美味しい時期を過ぎてから食べる「あほなことをしている」との自嘲めいた名の由来が伝わる、食品を無駄にしない知恵の料理。
- あらめ巻き水で戻したアラメ(褐藻の一種)でイワシやサンマを幾重にも巻き、醤油と砂糖で煮付けた鳥羽の郷土料理。伊勢神宮にも献上されてきたアラメを使い、地域によって巻く魚が変わると伝わる。
- 盆汁ごぼうやなす、かぼちゃなど旬の野菜をたっぷり煮込んだ味噌汁。お盆に殺生を避ける禅宗の教えから、かつお節や煮干しのだしを使わず、油揚げと具材の多さで旨みを出すのが特徴とされる。
- 茶粥ほうじ茶などを煎じた茶袋の湯に米を入れて炊いたお粥。耕地が少なく米が貴重だった伊賀地域で、水の量を増やして米を節約する工夫から生まれたとされ、夏は冷やして食べる家庭もあるという。
- ちゃつ大根や人参、れんこん、昆布、油揚げを千切りにし、酢と砂糖で煮た朝日町の料理。精進料理を盛った朱漆塗りの器「ちゃつ」に由来する名とされ、白く仕上げるため醤油を使わないのが特徴という。
- ふき俵大豆を炊き込んだご飯をふきの葉で米俵のかたちに包んだ伊賀地域の行事食。田植えの際、田の神に豊作を祈って供えるほか、農作業の合間の携帯食としても食べられてきたと伝わる。