発酵・保存 ── 漬物
千枚漬け
Senmai-zuke
聖護院かぶを薄切りにし、昆布と酢で漬ける京都を代表する漬物の一つとされる。長期保存を目的とせず繊細に仕上げるのが特徴で、江戸時代に御所の料理人が考案し漬物商として広めたと伝わる。
- 発祥: 京都府亀岡市篠町
- 東京から西へ約390km
京都府亀岡市篠町
系譜
何でできているか
使うのは国内最大級のかぶらとされる聖護院かぶで、大きなものは4〜5キロにもなる。薄く切ったかぶを昆布や唐辛子とともに酢に漬け込む。従来の漬物のように塩漬けで乳酸発酵させる作り方だったともいうが、今は長期保存を目的とせず発酵もさせず、繊細な口当たりに仕上げるのが主流だという。からすみやスモークサーモンを挟むアレンジも見られる。
どう作るのか
かぶらの皮を厚めにむいて2ミリほどの薄さに切り、塩を振って一晩重石をしてから水気を切る。昆布、唐辛子とともに酢・砂糖・みりんの調味液に漬け込み、一昼夜置けば食べられる。聖護院かぶの出荷が始まる11月ごろから、大樽を使う仕込み風景が冬の京都の風物詩になっているといい、家庭でも収穫期に合わせてつくられている。
なぜこの形になったのか
江戸時代、御所の料理人だった大藤藤三郎が考案したとされ、のちに漬物商に転じたと伝わる。原料の聖護院かぶも左京区聖護院の農家が近江かぶの種を持ち帰り栽培を始めたのが発祥とされ、戦後は亀岡市篠町が名産地となって京都で流通する千枚漬けの大半を支えているという。御所ゆかりの料理人が考案したという由来が、繊細な仕上げ方にも表れている。
食べに行く前に
同じ系統の料理
この土地の食材と料理
兄弟
- しば漬けなすときゅうりを赤しそとともに塩漬けにする、京都を代表する漬物の一つとされる。大原の赤しそがしみ出す紫色と酸味が特徴で、建礼門院に献上された逸話から「紫葉漬け」の名が転じたと伝わる。
- すぐき漬けかぶらの一種すぐきを塩だけで漬け、独特の酸味を発酵させる京都を代表する漬物の一つとされる。上賀茂神社の社家が栽培を始めたと伝わり、江戸時代には他村への持ち出しも禁じられた、かつては御所へ献上される品だったという。
- 壬生菜のからし和え京都市壬生地区発祥の京野菜「壬生菜」を茹でて刻み、すりごまと練り辛子で和える。みず菜と同じ仲間だがぴりっとした辛みと苦味があり、千枚漬けのそえ物としても知られているという。
対比
同じ京都府
- ちりめん山椒ちりめんじゃこと実山椒を酒・醤油・みりんで甘辛く煮た京都の惣菜で、昭和半ばに宮川町の料理人が手土産として作り始めたと伝わる。山椒のぴりっとした香りが余韻に残る。
- えびいもと棒だらの炊いたんエビのような縞模様が特徴の京野菜「えびいも」と、北海道産のマダラを干した「棒だら」を炊き合わせる。棒だらのゼラチン質がえびいもの煮崩れを防ぎ、えびいものアクが棒だらを柔らかくする「であいもん」。
- 伏見の酒京都・伏見の酒。桃山丘陵から湧く地下水に恵まれた地で、灘の硬水に対して柔らかな水質から仕込まれるとされ、丸みのある口当たりと膨らみのある甘みを持つ、地理的表示「GI京都」の酒質と重なるという。
- がんもどき豆腐に野菜を混ぜて丸め揚げた一品。京都では「ひろうす」「飛龍頭」とも呼ばれ、肉を使わない精進料理の発想から、野菜を混ぜ込んで揚げる形に結びついたとみられる、京豆腐文化を代表する一皿である。
- はもの焼き物小骨の多いハモに熟練の「骨切り」を施し、醤油だれの照り焼きや塩焼きにする京料理。生きたまま京都まで運べる生命力の強さから内陸の京都に根づいたとされ、「はも祭り」とも呼ばれる祇園祭の行事食でもある。
- 賀茂なすの田楽直径10cmを超え「なすの女王」とも呼ばれる京野菜「賀茂なす」を輪切りにして油でじっくり焼き、酒・みりん・砂糖で煮詰めた田楽味噌をのせる。上賀茂の扇状地で古くから育てられてきたと伝わる。