ごはんもの ── 寿司
岡山ばらずし
Okayama Bara-zushi
サワラやイカ、レンコンなど瀬戸内の幸を酢飯に混ぜ込み、彩りよく盛り付ける岡山の祝いずし。倹約令をすしの具の多さで乗り越えた逸話が伝わり、まつりずしとも呼ばれる。
- 発祥: 岡山県岡山市
- 東京から西へ約540km
岡山県岡山市
系譜
何でできているか
サワラやイカ、エビ、タコ、アナゴといった瀬戸内の魚介と、れんこんや高野豆腐、たけのこ、ごぼうなど山と畑の恵みを、昆布だしで炊いた酢飯に混ぜ込む。仕上げに錦糸卵や絹さやを飾り、春はサワラとたけのこ、秋はまつたけと、季節ごとに具の顔ぶれが変わる。十種類を超える具が一椀の中で色とりどりに重なり合い、ひと口ごとに違う具材にあたる賑やかさが身上になっている。
どう作るのか
魚介は塩焼きや照り焼きにし、野菜はそれぞれ甘辛く煮含めて下ごしらえする。飾り用に取り分けた具材以外を酢飯に混ぜ込み、たらい状の桶に盛って彩りよく並べる。取り分けやすいよう、大皿や桶のまま食卓に出すのが基本の形で、各家庭で下ごしらえの味つけや具の組み合わせが少しずつ違うとされる。混ぜ込む具材と、仕上げに飾りとして残す具材の振り分け方にも、家ごとの流儀があるという。
なぜこの形になったのか
江戸時代、岡山藩主が「庶民は一汁一菜」と倹約令を出した際、魚や野菜をすしの具にすれば副菜にはあたらないという理屈で、十種類を超える具を酢飯に混ぜ込んで食べたのが始まりと伝わる。倹約令をすり抜ける工夫が、そのまま具だくさんの形として今に残っているとされ、瀬戸内海の魚介と背後の山の幸をどちらも余さず使い切る土地柄が、この賑やかな盛り付けを後押ししたとも考えられている。
食べに行く前に
同じ系統の料理
この土地の食材と料理
対比
- さわらのこうこずし備前市日生町で豊漁を祝う寿司。酢に漬けたさわらと千切りのたくあん(こうこ)、木の芽を酢飯に混ぜ込む。もとはさわらだけだった寿司に古漬けが混ざり定着したと伝わる。本文が日生町を名指しするためその座標を使用した。
- 黒豆入りちらしずし岡山県北東部の勝英地域特産、大粒の黒豆「作州黒」を煎ってすし飯に炊き込んだちらしずし。酢を合わせると桜色に染まり、祭りや法事などハレの日に岡山各地でつくられるばらずしの一種という。
- ままかりずしママカリ(サッパ)を甘酢でしめ、握った酢飯にのせる岡山の郷土ずし。「ご飯を借りに行くほど美味しい」という名の由来が、そのまま魚の身上を語る、瀬戸内の小魚を無駄なく食べ切る知恵の一皿。
- 田舎ずしみょうがやりゅうきゅう、こんにゃくなど山の幸だけを酢飯にのせる高知県の郷土ずし。海産物が手に入りにくかった山間部で工夫された、魚を使わない珍しいちらしずしとされる。
源流
同じ岡山県
- あみとだいこんの煮付け瀬戸内で秋の訪れを告げる、小エビのアミをだいこんと醤油や砂糖で煮付けた一皿。脂ののったアミとだいこんの相性がよく、荒天で漁に出られない冬場は塩漬けにして食べ継いだという。
- 手延べ素麺のばち汁浅口市鴨方町で、手延べそうめんをつくる際に端に出る「ばち」を大根や人参と煮た汁物。三味線の撥に形が似ることが名の由来とされ、そうめんよりコシが強く小さな子どもにも食べやすいという。
- ブリ雑煮岡山県南部で正月に食べる、出世魚ブリを具にした雑煮。ほうれん草や大根、百合根などの根菜を合わせ、縁起のよいブリで新年を祝う家庭料理として親しまれている。既存の「ブリ」は魚の食材ページで、本品は調理された正月料理のため新規作成。
- 千屋牛岡山県新見市で育つ黒毛和種。江戸時代からの最古級の蔓牛(系統牛)の血統を受け継ぐとされ、高梁川の清らかな水と肥沃な土壌の恩恵を受けて育つという。全国の和牛銘柄のルーツのひとつに数えられるという。
- デミかつ丼揚げたてのとんかつに熱々のデミグラスソースをかけた岡山市発祥のご当地丼。東京のホテルの洋食に感動した老舗の創業者が考案したと伝わり、店ごとにトッピングが違うという。
- 鮒めし児島湾の干拓地に育った水路でとれる寒鮒を、まな板で叩いてミンチにし、根菜と炒め煮した汁を熱いごはんにかけて食べる。「とんとこ汁」とも呼ばれ、冬の寒い日の料理として伝わる。矢掛町・玉野市・八浜にまたがる広域のため玉野市を代表点とした。