ごはんもの ── 寿司
なれずし
Narezushi
魚を塩漬けにし、飯とともに長く漬け込んで乳酸発酵させる、すしの最も古い形式とされる型。飯は食べずに魚だけを取り出す場合もあり、強い酸味と発酵香が特徴になっている。
系譜
何でできているか
塩漬けにした魚を、炊いた飯とともに桶に漬け込む。米は魚を発酵させるための床として使われ、主食として食べることを前提としない場合が多い。数カ月から一年以上かけて乳酸発酵が進むと、魚の身は強い酸味と独特の発酵香をまとい、飯は粥のように溶けた状態になる。地域によっては、この溶けた飯ごと食べるか、魚の身だけを取り出して食べるかの流儀が分かれる。
どう作るのか
魚は内臓とうろこを除いて塩でしっかりと締め、数週間から数カ月ほど寝かせる。塩を洗い落としたのち、炊いた飯と交互に桶へ詰め、重石をのせて長期間発酵させる。発酵の進み具合は気温や仕込む時期によって大きく変わり、家や地域によって漬け込む期間もさまざまだという。仕込みから食べ頃までの時間の長さそのものが、保存食としての性格を色濃く残している。
なぜこの形になったのか
冷蔵の技術がない時代、魚を長く保存する方法として、塩漬けと乳酸発酵を組み合わせるこの製法が各地で選ばれたと考えられている。もともとは東南アジア大陸部で稲作とともに発達した魚の保存法が伝わったとする説もあり、日本では琵琶湖のふなずしをはじめ、吉野のアユずし、秋田のハタハタ寿しなど、各地の川や湖、海でとれる魚に合わせて独自に発展したとされる。
食べに行く前に
同じ系統の料理
この土地の食材と料理
派生
- ふなずし琵琶湖の子持ちニゴロブナを塩漬けし、さらに飯に漬けて半年以上発酵させる、なれずしの代表格。強い酸味と発酵香を持ち、飯ごと食べるか身だけを食べるかは人によって分かれるという。
- かぶらずし塩漬けにしたかぶらでブリを挟み、米麹の甘酒で発酵させる金沢の正月食。刺身とも粕漬けとも違う、酸味の奥に麹の甘さが層になった味わいで、地元では欠かせない一皿とされる。
- ハタハタ寿し秋田近海でしか揚がらないハタハタを、飯と米麹に漬けて三週間ほど発酵させる秋田の郷土ずし。雷鳴とともに岸へ寄る産卵期の一時期だけ大量に獲れる魚を、丸ごと仕込んで長く食いつなぐ。
- 赤ずし(赤漬け)炊いたもち米を赤じそと酢で漬け込み、短く発酵させる秋田の郷土ずし。魚を使わない植物性のなれずしで、お盆に仏前へ供える行事食としても伝わる、酸味の穏やかな夏の一皿。
- 大根ずし大根と身欠きニシンを米麹で漬け込む、加賀地方の発酵ずし。北前船が運んだニシンが庶民の手に届いたことで根づいたとされ、かぶらずしと並んで石川の正月に欠かせない、酸味の穏やかな発酵の味として親しまれている。
対比
- 押し寿司木型に酢飯と具材を詰め、重石や押し蓋で押し固めて切り分ける寿司の型。握りずしより古い系譜とされ、大阪の箱寿司をはじめ各地に地域ごとの型が今も数多く伝わっている。
- 鮎なれずし秋に川を下る子持ちの落ち鮎を塩漬けし、炊きたてのご飯を腹に詰めて桶で2ヶ月ほど乳酸発酵させる岐阜市のなれずし。長良川鵜飼で獲れた鮎を使った鮎鮓は江戸期に将軍家へ献上されたと伝わるという。
- 握り寿司すし飯に魚介などのネタをのせ、軽く握って形を整える寿司の型。今日「寿司」といえばこれを指すほど代表的な存在で、江戸時代後期に屋台料理として広まったとされている。
- いなり寿司甘辛く煮た油揚げの中に酢飯を詰める寿司の型。天保年間に名古屋で考案され江戸へ伝わったとされ、稲荷神の使いとされるキツネが名の由来という言い伝えを持つ、握らずに仕立てるすし。