ごはんもの ── 寿司
いなり寿司
Inari-zushi
甘辛く煮た油揚げの中に酢飯を詰める寿司の型。天保年間に名古屋で考案され江戸へ伝わったとされ、稲荷神の使いとされるキツネが名の由来という言い伝えを持つ、握らずに仕立てるすし。
系譜
何でできているか
薄く切った「かます」と呼ばれる油揚げを甘辛いだし汁で煮含め、汁気を軽く絞ってから中に酢飯を詰める。ネタをのせる握りずしと違い、外側の油揚げそのものが甘みと旨みの層になっており、酢飯との対比が一つの俵の中で完結する構造になっている。地域によっては油揚げを俵型ではなく三角形に切って詰めることもあり、愛媛県松山市の三角形はその代表例とされる。
どう作るのか
油揚げは油抜きをしたのち、だし・醤油・砂糖・みりんでくたっとするまで煮含め、冷まして汁気を軽く絞る。切り口から開いて袋状にし、俵型に握った酢飯を詰め込んで形を整える。煮汁を甘く仕立てるほど、酢飯の酸味との対比がはっきりと感じられるといい、油揚げの煮含め方に家庭ごとの味の個性が出やすいとされる。ごまや刻み野菜を酢飯に混ぜ込んで彩りを足す作り方もある。
なぜこの形になったのか
稲荷神の使いとされるキツネが油揚げを好むという言い伝えと、キツネが人に化けるという民間説話が名の由来になったとされる。天保年間に名古屋で生まれ、嘉永年間には行商によって江戸で広まったと伝わり、握らずに油揚げへ酢飯を詰めるだけで仕立てられる手軽さが、屋台や行商で売り歩く商いの形によく合っていたのだと考えられている。