ごはんもの ── 寿司
押し寿司
Oshi-zushi
木型に酢飯と具材を詰め、重石や押し蓋で押し固めて切り分ける寿司の型。握りずしより古い系譜とされ、大阪の箱寿司をはじめ各地に地域ごとの型が今も数多く伝わっている。
系譜
何でできているか
木型や竹の皮など地域ごとに異なる型に酢飯を詰め、しめ鯖や小鯛、でんぶなどの具材をのせて蓋をし、重石で押し固める。握りずしのように一つずつ仕立てるのではなく、まとめて押した塊を四角や短冊状に切り分けるため、切り口が揃った規則的な形になるのが特徴とされる。型の素材や大きさは地域によって異なり、同じ押しずしでも見た目の印象は土地ごとに変わる。
どう作るのか
型の内側を酢で湿らせて酢飯がくっつくのを防ぎ、具材と酢飯を交互に詰めていく。蓋をして重石をのせ、数十分から数時間かけて押し固める。型から抜いたのち、濡らした包丁で切り分けて仕上げる。押す時間の長さによって、飯と具材のなじみ方や食感の締まり具合が変わるといい、地域や家庭ごとに好みの加減が受け継がれているという。
なぜこの形になったのか
魚を生のまま扱うのではなく、酢や塩でしめてから型に詰めて押し固めるこの技法は、握りずしが屋台料理として広まる以前から関西を中心に行われていたとされる。まとめて仕込んで運べる形は、祭礼や祝いの席に大人数分を用意する必要から発達したと考えられており、地域ごとに型の大きさや具材が変わりながら各地に伝わっている。冷蔵のない時代、酢と塩でしめる工程そのものが保存の技法でもあった。
食べに行く前に
同じ系統の料理
この土地の食材と料理
派生
- ボウゼの姿寿司イボダイの地方名ボウゼを一尾丸ごと開いて酢飯を包み、姿のまま仕立てる徳島の秋祭りずし。新鮮なボウゼほど身が締まって姿寿司に向くとされ、皿の上でも魚の形がそのまま残る。
- 大村寿司白身魚のそぼろやかんぴょう、錦糸卵を重ね、木枠で押し固める長崎県大村市の押し寿司。城を奪還した兵に振る舞われたという言い伝えを持ち、酢飯には控えめな甘みが効いている。
- 須古ずしうるち米ともち米を合わせて炊き、ムツゴロウの蒲焼きなど有明海と里山の幸を重ねる佐賀県白石町の押し寿司。木箱「もろぶた」で四角く押し固め、来客をもてなす一皿として伝わる。
- 柿の葉寿司塩でしめたサバの薄切りを酢飯にのせ、渋柿の葉できっちり包んで一晩なじませる奈良吉野の押し寿司。柿の葉のタンニンと香りが防腐と風味づけを兼ねるとされ、祭礼のもてなしに欠かせない。
- こけらずししめサバや干し椎茸など奇数種の具を、木の香りの移る押し型で三、四段に層状に重ねる三重県東紀州の押し寿司。こけら葺きの屋根のように具をずらして盛ることが名の由来とされる。
- 岩国寿司木枠で三段から五段に重ねて押し固める、山口県岩国市の押し寿司。れんこんや椎茸、錦糸卵の層が断面に並ぶ華やかさから「殿様寿司」とも呼ばれ、祝いの席で切り分けて振る舞われる。
- 酒ずし灰持酒と呼ばれる地酒を振った酢飯に、鯛やエビなど約十種の具を重ねて半日発酵させる鹿児島の押し寿司。花見の宴の残り物から生まれたという言い伝えを持つ、酒の香り立つ一皿。
- 箱寿司木箱で押し固めて切り分ける大阪の型。握りより古い、押し寿司の系譜を今に残す。
- 棒寿司酢締めにした魚を酢飯にのせ、巻きすで棒状に締めて切り分ける寿司の型。押しずしの一種とされ、京都の鯖寿司をはじめ、サンマやサバを使う地域の型が各地に伝わっている。