ごはんもの ── 寿司
かぶらずし
Kaburazushi
塩漬けにしたかぶらでブリを挟み、米麹の甘酒で発酵させる金沢の正月食。刺身とも粕漬けとも違う、酸味の奥に麹の甘さが層になった味わいで、地元では欠かせない一皿とされる。
- 発祥: 石川県金沢市
- 東京から西へ約300km
石川県金沢市
系譜
何でできているか
主役は分厚く輪切りにしたかぶらと、脂の乗ったブリ。塩でしめて水を抜いたかぶらに、同じく塩漬けにして寝かせたブリを挟み込み、米麹と飯で仕込んだ甘酒を全体にまとわせる。人参や柚子の皮、赤唐辛子が彩りに添えられ、断面は白いかぶらと紅色のブリが層をなす。噛むと酸味の奥から麹の甘さが追いかけてくる、刺身とも粕漬けともつかない味。
どう作るのか
ブリはひと月ほど塩をあてて余分な水気と生臭さを抜き、かぶらも一週間前後塩漬けにして水を絞る。糀に飯と湯を合わせた甘酒を一晩かけて仕込み、水を切ったかぶらでブリを挟んでは糀に埋めるように桶へ重ねていく。そのまま七日から十日ほど発酵させると、糀の乳酸発酵と塩の力で魚が生のまま日持ちする、なれずしの技法に連なる仕上がりになる。
なぜこの形になったのか
一説には、一本一俵と称されるほど高価だったブリを庶民の口にも合わせるため、かぶらで挟んでかさを増やしたのが始まりという。金沢は浅野川と犀川に挟まれた盆地で、冬は日本海側特有の湿った寒さに沈む。糀を使った低温発酵はこの寒さの中でこそ腐敗を抑えて進み、年の瀬に商家が得意先へ配る手土産としても広まったと伝わる。冷蔵の手立てがない時代、寒風にさらされる金沢の冬そのものが天然の保存庫として働いたとも言われる。
食べに行く前に
同じ系統の料理
この土地の食材と料理
同じ石川県
- あいまぜ能登の赤土で育つ大根や人参などの根菜を細く刻み、油揚げとともに煎り煮にする。正月やハレの日に作り置きされてきたとされ、使う野菜は土地ごとに違い見た目や味に地域性が出る。
- べか鍋ぬか漬けにしたイワシ(コンカイワシ)を、白菜やきのこと酒粕で煮込む能登の冬鍋。冷蔵技術のない時代の保存食が発祥とされ、大衆魚だったことから「今日も食べっか」が名の由来ともいわれる。
- えびす煮溶かした寒天にとき卵と砂糖、醤油を流し込んで固める。江戸期の料理書に記される卵寒天がルーツとされ、つるりとした見た目から「べろべろ」とも呼ばれる祝いの日の一品。
- 五色生菓子太陽・月・山・海・里に見立てた五種の餅や饅頭を菓器に詰める、金沢の婚礼菓子。加賀藩主に輿入れした珠姫のために献上されたのが始まりと伝わり、いまも祝いの返礼として配られる。
- UFOラーメンUFO目撃伝説で知られる石川県羽咋市の「はくいUFOグルメ」の一杯。すし店から洋食店まで複数の飲食店が参加し、醤油だれのスープにUFOをかたどった具材を添える。丼の上に羽咋という土地の物語が重なるとされる。