鍋・汁もの
イナムドゥチ
Inamuduchi
かつてイノシシで作った汁物が、入手しづらくなり豚肉に置き換わったことから「イノシシもどき」と呼ばれる。こんにゃくや高級な沖縄独自のかまぼこを甘めの味噌でとろりと仕立て、旧正月や卒業式などの祝いの膳を彩る。
- 発祥: 沖縄県
- 東京から南西へ約1560km
何でできているか
豚の三枚肉にこんにゃくやかまぼこを合わせ、甘味噌でとろりと仕上げた沖縄県の汁物で、「イナムルチ」とも呼ばれる。具材から染み出た旨味が甘味噌と溶け合い、とろみのある滋味深い味わいになる。沖縄独特のカステラかまぼこを使うのが特徴とされ、魚のすり身を大量に加えて蒸し揚げた高級な食材が、汁全体に奥行きを与えている。
どう作るのか
豚の三枚肉はゆでてから短冊切りにし、戻した干ししいたけやこんにゃく、油揚げも同様に切る。豚だしとかつおだしを合わせた汁にかまぼこ以外の具材を入れて煮立て、最後にかまぼことともに甘味噌を加えて味をととのえる。使う甘味噌によって塩分の量が異なるため、味見をしながら調整するとよいとされ、寒い時季はとろみを強くすると熱が逃げにくくなり体がより温まるという。
なぜこの形になったのか
「イナ」はイノシシ、「ムドゥチ」はもどきを意味し、かつてイノシシ肉でつくられていた汁物が、入手しづらくなったことから豚肉に置き換わってこの名がついたとされる。琉球王朝時代の供応料理の流れをくむ祝い料理の一つで、五段のお取持ちという供応料理の一の膳に出される祝い料理でもあったと伝わる。旧正月や卒業式、成人式など、めでたい日に振る舞われてきたという。
食べに行く前に
同じ系統の料理
この土地の食材と料理
同じ沖縄県
- 足ティビチ豚足を昆布や大根とともに、骨がすっと抜けるほどやわらかくなるまで長時間煮こむ。「弱った部位と同じ部位を食べる」という以類補類の考え方から、脚に不調のある人や年配者、美容を気づかう人に好まれてきたとされる。
- 泡盛タイ米と黒麹だけを使い、米のすべてを麹にする全麹仕込みで造る沖縄の蒸留酒。黒麹由来のクエン酸のおかげで高温多湿の気候でももろみが腐敗しにくいとされ、単式蒸留機で仕上げる焼酎の仲間だという。
- 血イリチー豚の血に、豚肉やにんじん、きくらげなどを加えて炒め煮にする沖縄独特の料理。不調のある部位と同じ部位を食べて補うという以類補類の考えから貧血予防の薬効も期待され、旧正月前や法事の供え物として振る舞われてきた。
- チムシンジ豚レバーと黄色い島にんじんを煎じるように煮こむ、体調がすぐれない時のための滋養食。食事がそのまま薬になるという「クスイムン」の考え方に基づく料理で、貧血気味の時や風邪をひいた時によくつくられてきた。
- ゴーヤーチャンプルー苦味のあるゴーヤーを、しっかりとした沖縄豆腐や卵と炒め合わせる。豆腐が入ってはじめて「チャンプルー」と呼べるとされ、夏の暑さで落ちる食欲とビタミンCの摂取を同時に支える一皿として、季節を問わず食卓に上る。
- 花酒日本最西端の与那国島でのみ製造される、アルコール分60度前後の蒸留酒。原料や製法は泡盛と同じだが、度数が泡盛の上限を超えるため酒税法上は「スピリッツ」として区別されているという。