発酵・保存
煮たくもじ
Nita Kumoji
塩抜きしたかぶの葉の漬物を油で炒め、醤油やみりんで水分がなくなるまで煮しめる飛騨地域の一品。春先に酸っぱくなった漬物を捨てずに食べ切る知恵から生まれたとされ、仕上げにごま油と白ごまを効かせるという。
- 発祥: 岐阜県
- 東京から西へ約230km
何でできているか
塩抜きした古漬けの菜っ葉を油で炒めて煮た一品で、古漬け特有のすっぱみが油とごま油の香ばしさに包まれ、強火で仕上げた歯切れのよい食感が心地よいという。ご飯にもよく合う、質素ながら滋味深い惣菜だと伝わる。味わいの奥行きは、仕込みにかける手間のぶんだけ増すのだという。そうした細かな違いも含めて、今も家庭ごとに受け継がれている味だという。
どう作るのか
塩漬けしたかぶの葉などを水洗いして塩抜きし、三センチほどに切って油で炒め、調味料を合わせて水分がなくなるまで煮るという。仕上げにごま油と白ごまを加えて強火で仕上げると伝わる。漬物として食べたあとに、さらに煮て食べ切る工夫だそうだ。手順そのものは単純でも、仕上がりには家庭ごとの癖が出るといわれる。こうした工程は今も大きく変わらず、代々そのまま受け継がれているそうだ。
なぜこの形になったのか
「くもじ」は平安時代の宮中で漬物を指した言葉に由来するとされ、冬に漬けた菜っ葉が春に酸っぱくなったものを捨てず煮て食べる、食材を無駄にしない先人の知恵から生まれたという。食料が乏しかった時代、漬物を最後まで食べ尽くす工夫が土地に根づいたと伝わる。その土地ならではの事情が、今の形を静かに支えてきたと伝わる。
同じ系統の料理
この土地の食材と料理
同じ岐阜県
- 赤だつの酢ぶて里芋の赤紫色をした葉柄「赤だつ」の筋を取り、塩もみしてから合わせ酢で和える山県市の一品。石灰質のやせた土壌が芋の栽培に適した土地に伝わり、産後の体力回復を願って食べさせたとも言われている。
- 鮎なれずし秋に川を下る子持ちの落ち鮎を塩漬けし、炊きたてのご飯を腹に詰めて桶で2ヶ月ほど乳酸発酵させる岐阜市のなれずし。長良川鵜飼で獲れた鮎を使った鮎鮓は江戸期に将軍家へ献上されたと伝わるという。
- 鮎ぞうすい香ばしく素焼きにした鮎を、ほぐしながらだし汁とご飯でさっと煮た岐阜県の川魚料理。漁で傷がつき市場に出しにくくなった鮎をおいしく食べる工夫が始まりとされ、鮎料理を出す食事処で締めの一品として供されることが多いという。
- 鮒味噌素焼きにした鮒を戻した大豆と時間をかけて煮て、豆味噌とざらめで仕上げる西濃地域の川魚料理。旨味の強い豆味噌が鮒特有の臭みを和らげるとされ、身がほろほろになるまで煮込んで冬の保存食とするという。
- 鮎の塩焼鮎全体に塩をふり、ひれと尾に化粧塩をして炭火で両面を焼く岐阜県の鮎料理。1300年の歴史を持つ長良川鵜飼や、川をせき止めて魚を追い込む伝統漁法「ヤナ」で獲れた新鮮な鮎を使うのが特徴という。
- 五平餅つぶした米を串に刺し、くるみや落花生入りのたれで炙り焼く東濃・飛騨地域の一品。中山道を境に北は醤油味、南は味噌味が多いとされ、新米の収穫祝いや客をもてなす日のご馳走として供されてきたという。