発酵・保存
粕酢
Kasu-zu
酒粕を原料に造る赤みを帯びた酢で、愛知県半田市の酒造家が江戸時代に生み出したとされる。当時高価だった米酢より安価に旨味の強い酢を供給できたことから、江戸の握りずし文化の広がりを支えたとされる。
- 発祥: 愛知県半田市
- 東京から西へ約270km
愛知県半田市
何でできているか
赤みを帯びた琥珀色と、米酢にはない独特のこなれた旨味が特徴の酢。酒粕由来のアミノ酸が多く、まろやかで角の少ない酸味を持つ。江戸前寿司の酢飯に使うと、赤みがかった色合いと深いコクが出るため、白い酢飯とは違う古典的な風合いを再現できるとされる。ネタの魚とすし飯の間で味をつなぐ役割を果たすとされ、脂の多い魚とも相性がよいという。
どう作るのか
清酒を搾ったあとに残る酒粕を主原料とし、これに酢酸菌を加えて発酵させる。米をそのまま使う米酢とは異なり、酒粕という副産物を活用するため、原料コストを抑えながら旨味の強い酢を造れるとされる。長期熟成させることで酒粕特有の香りが穏やかになり、赤みのある色合いに変化していくという。搾りたての酒粕をどれだけ新鮮なうちに仕込めるかが、味の決め手になるとされる。
なぜこの形になったのか
愛知県半田市の酒造家が江戸時代に生み出したとされる。半田は酒どころとして酒粕が豊富に手に入る土地であり、当時高価だった米酢の代わりに安価な副産物を使う発想が生まれたと考えられている。江戸への海運の便もよく、江戸の握りずし文化の広がりを支えたとされる。廃棄されがちな副産物を調味料に変えた発想が、江戸の食文化を裏で支えたといえる。
同じ系統の料理
この土地の食材と料理
同じ愛知県
- ふな味噌フナを大豆とともに弱火で5時間ほど煮こんでから、豆味噌と砂糖のたれで仕上げる。木曽三川下流域の川魚料理で、12月後半から1月にとれる寒ブナが脂がのって美味とされ、骨まで柔らかくなるまで煮こむとされる。
- 五平餅炊きたてのうるち米を潰して串に刺し、味噌だれをつけて焼き上げる。中部地方の山間部発祑とされ、山仕事の安全を祈る祭りの前夜につくられてきたと伝わる、奥三河をはじめ中部山間部一帯の料理とされる。
- 箱ずし木枠に酢飯を詰め、エビやアナゴ、干ししいたけ、錦糸卵などを斜めに配置して押しかためる。皆が平等にさまざまな味を楽しめるよう具材を斜めに置くのが尾張・西三河地域の特徴とされ、祝い事でつくられてきたとされる。
- へぼ飯地蜂(クロスズメバチ)の成虫と幼虫を甘辛く煮つけ、炊きたてのごはんに混ぜ込む。信州から奥三河の山間部にかけて貴重なタンパク源とされてきたと伝わり、現在はごちそうとして客人にふるまわれるとされる。
- いがまんじゅう米粉の生地で粒あんを包み、表面に着色したもち米をつける。もち米の粒が栗の「いが」に似ることが名の由来の一説とされ、西三河地域では桃の節句にお雛様へ供える風習が伝わる。
- 味噌おでん土鍋の中央に味噌だれの壺を置き、大根や豆腐などをだしで煮てから壺の味噌につけて食べる。江戸で醤油だしの「関東煮」が広まる一方、愛知では豆味噌(八丁味噌)をつけて食べる方法が根づいたと伝わる。