発酵・保存
いしり(いしる)
Ishiru
能登半島に伝わる魚醤で、内浦地区ではイカの内臓、外浦地区ではイワシやサバを主原料とするとされる。1年以上発酵・熟成させて造る技術は国の登録無形民俗文化財となっており、日本三大魚醤の一つに数えられる。
- 発祥: 石川県能登町
- 東京から北西へ約290km
石川県能登町
系譜
何でできているか
内浦地区ではイカの内臓、外浦地区ではイワシやサバを主原料とする魚醤で、地区によって香りと塩気の質感が異なるとされる。熟成が進むほど角の取れた旨味に変わり、能登の郷土料理「いしり鍋」に使うと、貝や野菜のだしと合わさって複雑な旨味の層ができるという。かき揚げの衣に少量混ぜるなど、隠し味として使う食べ方もあるとされる。
どう作るのか
イカの内臓や小魚を塩とともに漬け込み、1年以上かけて発酵・熟成させる。木桶や壺の中でゆっくりと分解が進み、液体状になった上澄みを濾して使う。内浦と外浦で原料が異なるため、同じ「いしり」でも地区ごとに香りの強さや塩気の効き方に違いが出るとされる。発酵期間が長引くほど雑味が減り、旨味だけが残っていくという。
なぜこの形になったのか
能登半島の沿岸部で、獲れた魚介を余すことなく使い切る保存の知恵として発達したとされる。内浦・外浦それぞれの漁で獲れるものが違ったことが、原料の違いをそのまま生んだと考えられている。1年以上発酵・熟成させる技術は国の登録無形民俗文化財となっており、各地に残る魚醤の一つとされる。半島という限られた土地で、海の恵みを無駄にしない工夫が受け継がれてきたといえる。
同じ系統の料理
この土地の食材と料理
兄弟
同じ石川県
- あいまぜ能登の赤土で育つ大根や人参などの根菜を細く刻み、油揚げとともに煎り煮にする。正月やハレの日に作り置きされてきたとされ、使う野菜は土地ごとに違い見た目や味に地域性が出る。
- べか鍋ぬか漬けにしたイワシ(コンカイワシ)を、白菜やきのこと酒粕で煮込む能登の冬鍋。冷蔵技術のない時代の保存食が発祥とされ、大衆魚だったことから「今日も食べっか」が名の由来ともいわれる。
- 大根ずし大根と身欠きニシンを米麹で漬け込む、加賀地方の発酵ずし。北前船が運んだニシンが庶民の手に届いたことで根づいたとされ、かぶらずしと並んで石川の正月に欠かせない、酸味の穏やかな発酵の味として親しまれている。
- えびす煮溶かした寒天にとき卵と砂糖、醤油を流し込んで固める。江戸期の料理書に記される卵寒天がルーツとされ、つるりとした見た目から「べろべろ」とも呼ばれる祝いの日の一品。
- 五色生菓子太陽・月・山・海・里に見立てた五種の餅や饅頭を菓器に詰める、金沢の婚礼菓子。加賀藩主に輿入れした珠姫のために献上されたのが始まりと伝わり、いまも祝いの返礼として配られる。
- UFOラーメンUFO目撃伝説で知られる石川県羽咋市の「はくいUFOグルメ」の一杯。すし店から洋食店まで複数の飲食店が参加し、醤油だれのスープにUFOをかたどった具材を添える。丼の上に羽咋という土地の物語が重なるとされる。