甘味
かんころ
Kankoro
米がとれにくい佐田岬半島で保存食として干したさつまいもを、じっくり炊いて砂糖と小豆を合わせるおやつ。鍋で練り炊く音が名の由来とされ、みかん栽培が盛んになる前の暮らしを伝える。
- 発祥: 愛媛県伊方町
- 東京から西へ約720km
愛媛県伊方町
何でできているか
ねっとりと練り上げた干し芋に小豆の粒がまじり、口に含むとほんのり甘い素朴な味が広がるおやつだという。佐田岬半島にある伊方町では、沿岸沿いで米がとれにくく麦やさつまいもが主食だったと伝わる。芋は生のままでは長く保存できないため干して保存食にし、それをじっくり炊いて砂糖を加えたのが「かんころ」とされる。鍋を木杓子で練り炊く音が名前の由来ともいわれている。
どう作るのか
小豆を固めに煮ておく。切り干し芋にひたひたの水を加えて煮て、芋が柔らかくなったら砂糖を加える。すりこぎでつぶしながら小豆と合わせ、味をなじませる。食べやすい大きさに丸くまとめて仕上げる。手間はかかるが、干し芋ならではの凝縮した甘みが際立つおやつになるという。保存食を炊き直すだけの簡素なつくり方が、長く受け継がれてきた理由とされる。
なぜこの形になったのか
細長く伸びた地形で知られる佐田岬半島は、瀬戸内海と宇和海という二つの漁場を持つ独特の地形で栄えてきたと伝わる。米が育ちにくい土地柄から、麦やさつまいもを主食にせざるを得ず、長期保存のために芋を干す知恵が根づいたとされる。明治以降は傾斜地を生かしたみかん栽培が盛んになり、段々畑の石垣が土壌の水はけや保温に役立ったとも伝わり、芋からみかんへと産地の顔が移り変わっていったという。
食べに行く前に
同じ系統の料理
この土地の食材と料理
対比
同じ愛媛県
- ぼて茶煮出した番茶を塩をつけた茶せんで泡立て、黒豆ご飯やたけのこなどの具を入れて食べる松山の一皿。倹約令の折に藩主の女房たちが工夫したと伝わり、花まつりでふるまわれる寺の名物でもある。
- えび天殻ごとすりつぶしたジャコエビを白身魚や豆腐と練り合わせ、油で揚げる東予の練り物。塩分を抑えて豆腐の甘みとエビの香りを立たせ、殻のジャリっとした歯ざわりが持ち味とされる。
- いぎす豆腐海藻のいぎすと生の大豆粉をだし汁で煮溶かし、寒天のように冷やし固める今治の料理。ひんやりとした食感で暑い盛りの食欲をそそり、エビなどの具を入れる家と入れない家で味わいが分かれるという。
- さつま焼いてほぐした白身魚を麦味噌とすり合わせ、骨でとった出汁でのばして熱い麦飯にかける南予の一杯。ぱさつきがちな麦飯を食べやすくする漁師の工夫と伝わり、地域や家庭で使う魚が違うという。
- 鯛そうめんタイを一尾丸ごと煮て、ゆでた素麺と大皿に盛り、煮汁をかけ汁にして食べる。素麺は七夕の織女に、タイは縁起物にちなむとされ、婚礼や還暦など祝いの席で親族に振る舞われてきたという。
- 鯛めしタイを丸ごと米と炊き込む東予の型と、生の切り身を卵と醤油だれに漬けて熱いご飯にのせる南予の型がある。縁起の良い魚とされ祝いの席でも食べられ、家庭ごとにどちらの食べ方が根付くかが分かれるという。