惣菜
いがみの煮付け
Igami no Nitsuke
県南部でブダイと呼ばれる磯魚「イガミ」を丸ごと甘辛く煮付ける一皿。冬に岩場の海藻を食べて臭みが抜けて美味になることから、田辺市周辺では正月に鯛の代わりに尾頭付きで供える習慣が伝わるという。
- 発祥: 和歌山県田辺市
- 東京から南西へ約460km
和歌山県田辺市
何でできているか
「いがみ」は一般に「ブダイ」と呼ばれる磯魚で、秋から冬にかけて岩場の海藻を食べて臭みが抜け、肉厚でプリプリとした白身を楽しめる。田辺市周辺や白浜町富田では正月にタイの代わりに尾頭付きで煮付ける習わしがあり、祭りにも欠かせない一皿とされている。煮汁が冷めるとゼラチン質でにこごりができ、身と一緒に食べると磯の香りが引き立つ。
どう作るのか
内臓を取り除いたいがみを丸ごと使い、砂糖と醤油、酒で煮付ける。祭りや祝い事では尾頭付きのふくらみのある形を保つため、腹に大根を詰め込んでから煮ることもある。煮付けにすると身離れが良くなり、プリプリとした食感が際立つ。煮汁に溶け出したゼラチン質は冷めるとにこごりになり、身とあわせて食べると独特の風味を楽しめる。煮付け以外にも味噌汁やフライ、干物に向く魚となっている。
なぜこの形になったのか
いがみは11月から1月にかけて刺網漁で水揚げされ、潮の温度が20度以下になると味が良くなるとされる。白浜町富田や田辺市周辺では、正月にタイではなくいがみを尾頭付きで煮付けて食べる習慣が伝わっており、「殿さまはタイ、庶民はせめてタイという名の魚を」という言い回しから広まったともいわれている。もともと特別に好まれていた魚ではなかったが、味の良さから次第に祝いの席に定着していったと考えられている。
食べに行く前に
同じ系統の料理
この土地の食材と料理
対比
同じ和歌山県
- ぼうり皮をむかない里芋の親芋を二日がかりで煮込む、田辺市大塔村鮎川に伝わる正月の一皿。護良親王を助けなかった非礼を600年悔い、餅つきをやめて代わりに食べ続けたとの言い伝えが残っているという。
- ごま豆腐生のごまの皮を除いてすり潰し、高野山の水と吉野葛で練り上げて炊く精進料理の一つ。肉や魚を断つ修行僧のたんぱく源として生まれたと伝わり、今では高野山の土産や和食の一品として広く親しまれている。
- ゴンバチの油炒め正式にはイタドリという山菜「ごんばち」を、湯通しして皮をむいてから油でさっと炒める春の一品。折ると軽快な音が鳴るほど太くよく伸びた茎を使い、コリコリとした歯ごたえとほのかな酸味が持ち味だという。
- はたごんぼずし橋本市西畑地区の急斜面の赤土で育つ、太くて丸みのある「はたごんぼ」を輪切りにし、中心をくり抜いて酢飯を詰める。一時は栽培が途絶えかけたが、地元組合が2013年に約70年ぶりに復活させたという。
- いのこ餅うるち米ともち米に里芋を炊き込んでつぶし丸めた餅に、塩を効かせた小豆あんをまとわせる。旧暦10月の亥の日、実りに感謝して田の神に供える行事食とされ、県南部の一部では秋祭りでもつくられているという。
- かきまぶり高野豆腐や干ししいたけなど乾物と季節の野菜をすし飯に混ぜ込むちらしずし。「かき混ぜ」がなまった那賀地方の方言「まぶり」が名の由来で、来客が何人来るか分からない祝い事の日にたくさんつくって振る舞われてきた。