発酵・保存 ── 漬物
いぶりがっこ
Iburigakko
大根を囲炉裏の煙で燻してから米ぬかで漬け込む、秋田の燻製たくあん漬け。天日干しが凍ってしまう雪深い内陸南部で、火の熱と煙を使う保存の知恵として生まれたと伝わる漬物である。
- 発祥: 秋田県横手市ほか県内陸南部
- 東京から北へ約410km
秋田県横手市ほか県内陸南部
系譜
いぶりがっこ
何でできているか
大根を米ぬか、塩、砂糖(ザラメ)で漬け込むのは普通のたくあんと同じだが、漬け込む前に大根をナラや桜の煙で2〜5日いぶす工程が加わる。燻製の香りと糠漬けのうま味が冬の間じっくり発酵しながら融け合い、飴色の身と独特の風味を生むという。「いぶり」は「いぶした」の意味で、「がっこ」は秋田で漬物を指す方言とされる。
どう作るのか
大根を手作業で縄編みし、いぶし小屋に吊るして昼夜火を焚きながら数日いぶす。飴色になったらすすを洗い流し、米ぬかや塩、砂糖などを振りかけながら樽に漬け込み、2カ月以上かけて発酵・熟成させる。樽から出したら表面のぬかを冷水で洗い流し、薄く切って器に盛る。2019年には地理的表示(GI)にも登録され、燻製方法や熟成期間に基準が設けられているという。
なぜこの形になったのか
冬の訪れが早い秋田内陸南部は、日本海の湿った西風が奥羽山脈にぶつかって降雪が多く、日照時間も短いため、天日干しの途中で大根が凍ってしまう。囲炉裏の熱と煙で大根を干すことで保存性を高めたのがいぶりがっこの原型とされ、この地域のほぼ全戸でつくられてきたといい、その起源は室町時代までさかのぼるともいわれている。
食べに行く前に
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この土地の食材と料理
同じ秋田県
- 赤ずし(赤漬け)炊いたもち米を赤じそと酢で漬け込み、短く発酵させる秋田の郷土ずし。魚を使わない植物性のなれずしで、お盆に仏前へ供える行事食としても伝わる、酸味の穏やかな夏の一皿。
- あさづけ砕け米をすりつぶして煮た生地を砂糖と酢で味付けし、きゅうりやかぶ、季節の果物を混ぜた甘酸っぱいデザート。一般的な漬物の「浅漬け」とは別物で、田植えを終えた女性たちを癒やす夏の一品と伝わる。
- 江戸系ラーメン醤油ラーメンの表面に、ニラとニンニクを効かせた真っ赤な辛味噌がひとかたまり乗る。溶かしながら食べ進めるうち、あっさりした一杯が少しずつ濃く辛く変わっていく秋田市のご当地ラーメン。
- 干し餅切った餅を吊るし編みにして水に浸し、冬の寒さで凍らせては乾かす「寒締め」を経て作る保存菓子。さくさくとした歯ごたえが持ち味で、腹持ちがよく、田植えの合間の軽食として食べられてきたと伝わる。
- いものこ汁里芋の子芋や孫芋「いものこ」を、鶏肉やきのこ、山菜とともに味噌や醤油で煮た秋の汁物。横手市山内地域特有の土壌で育つ里芋は柔らかな歯ごたえが特徴で、県北のきりたんぽ鍋と対比される郷土料理と伝わる。
- 秋田の酒軟水を使い、灘の硬水とは対照的にまろやかで細やかな酒質を目指すとされる秋田の酒。雪に埋もれた蔵が保温効果を持つことを生かし、低温でじっくり発酵させる造りが伝統として続いているという。