発酵・保存 ── 発酵調味料
濃口醤油
Koikuchi shoyu
国内のしょうゆ出荷量の約8割を占めるとされる、最も一般的な醤油。大豆と小麦をほぼ同量用いて造られ、赤みを帯びた色と強い香りを持つ。煮物からかけ用まで幅広く使われ、地域を問わず食卓の基本となっている。
系譜
何でできているか
色は赤みを帯びた琥珀色から黒に近く、香りは強め。塩気に加えて大豆由来の旨味と小麦由来の香ばしさ・軽い甘みが重なり、煮物にもかけ醤油にも使える万能な味の骨格を持つ。冷たいままだと角の立つ塩気が先に来るが、加熱すると香りがふくらんで丸くなり、照り焼きのたれに使うと表面に艶やかな焦げ色がつく。刺身にそのままつけても、素材の味を覆い隠さず輪郭だけを引き締める強さがある。
どう作るのか
蒸した大豆と炒った小麦をほぼ同量合わせて種麹をつけ、数日かけて麹にする。これに食塩水を加えてもろみにし、桶の中で半年から1年ほど発酵・熟成させたのち搾って火入れする。大豆と小麦を等量近く使う配合と、搾った後の火入れによる香りの安定化が、赤みの強い色と強い香りを生んでいる。同じ配合でも蔵ごとに麹菌や発酵期間が違い、味の幅が出るとされる。
なぜこの形になったのか
大豆・小麦とも比較的どこでも手に入る組み合わせだったことから、特定の産地に縛られず各地の蔵で造られた。江戸期の関東で醸造技術が発達し、大消費地の需要に応える形で全国に広まったとされる。今も国内出荷量の約8割を占めるとされ、他の4分類はこの濃口を基準にした対照・派生として位置づけられる。産地を問わず似た配合で造れることが、結果として全国一律の「標準の醤油」を生んだといえ、他の分類はここからの差分として理解しやすい。
食べに行く前に
同じ系統の料理
この土地の食材と料理
兄弟
派生
使う
- 卵かけご飯炊きたてのご飯に生卵を割り入れ、醤油などで味付けして食べる料理で、生卵を安全に食べられる衛生管理の行き届いた日本ならではの食べ方とされる。TKGの略称でも親しまれている。
- 山形のだしなすやきゅうりなどの夏野菜と薬味を刻み、醤油で和える山形の常備菜。生のまま手軽に食べられるスピード料理として、暑さの厳しい村山地域を中心に親しまれてきたという。
- 釜玉うどん釜で茹で上がった麺を水で締めずに器へ移し、生卵と醤油を絡めて食べるうどん。混ぜると熱々の麺に卵がとろりとからみ、香りとコクが立つとされる。釜揚げに卵と醤油を加えた食べ方として広まったという。
- 油そばスープを張らず、丼の底にためた醤油だれとごま油を麺にからめて食べる。武蔵野地区の店が昭和30年代に売り出したのが始まりと伝わり、酢とラー油を足して味を変えながら食べ進める。
- 荻窪ラーメン鰹節や煮干しの和風だしに濃口醤油だれを合わせた、澄んだ琥珀色のスープが特徴。そば屋からの転業組が多かったといい、和風だしの技術がそのままラーメンに持ち込まれたと伝わる。中細のまっすぐな麺が軽やかにスープを持ち上げる。
- つけ麺太く弾力のある麺を、酸味と甘みをきかせた濃い醤油だれのつけ汁にくぐらせて食べる。中野の大勝軒で賄い料理として生まれ、麺を大盛りにして見栄えよく出したのが始まりと伝わる。
- 家系ラーメン豚骨と鶏ガラを長時間炊いたスープに濃口醤油だれと鶏油を合わせ、太くて短めの麺、ほうれん草と海苔をのせる。1974年に横浜・新杉田で創業した店が源流とされ、工場地帯の働き手の間で広まったと伝わる。
- 背脂ラーメン醤油ラーメンのスープに刻んだ豚の背脂を細かく振りかけ、丼を最後まで熱く保つ。2000年前後の東京で広まったスタイルで、環状七号線沿いの店々が競い合う中で磨かれたと語られる。
- 小田原系ラーメン色の濃い醤油スープに、平打ちの縮れ麺を合わせる。具に細長く巻いたワンタンをのせる店が多いのが特徴で、城下町として栄えた小田原の中華食堂に、一軒ではなく街の味として根づいてきた一杯と伝わる。
- 冷丼醤油だれの効いた冷たいスープに中華麺を沈めた、栃尾で「冷丼」とも呼ばれる夏の定番料理。猫舌だった後の店主が幼い頃に冷たいラーメンを求めたことがはじまりと伝わっている。